第23話 授業参観のおまけ編です。
お楽しみいただければ幸いです。
「……」
な、なにやってるんですかお義母様ぁーー!!
心の底から悲鳴をあげる私がいる。
よく見れば私と同じように両手で頭を抱え、苦悶しているイリアさんが目の端に映るが、あちらはあちらで穴があれば隠れたい気持ちでいっぱいなんだろう。
「それでは授業を始めます」
何処か疲れ切った様子でマリー先生が授業開始を宣言される。
お義母様は邪魔にならないよう教室の後ろに回られたが、後の方が徐々に騒がしくなるに連れ振り向きたい衝動にかられながらも、此処で振り向けば負けた気がするので必死に感情を抑える。
って言うか誰か止めようよ。お義母様が一人でお城から出るとは考えられないので、必ず誰かは知っているはず。
そう思い、こっそり廊下の方を見てみるも、ガラス越しで見えるのはメイド長であるノエルさんの姿。
って護衛も無しですか!?
お義父様もさぞ頭を抱えられている事だろう。いや、もしかして来れなかった事を悔やんでおられるかも……。どちらにせよ、今は騒ぎが大きくならない事を祈りつつ、ひたすら他人のフリを貫こう。
授業は淡々と進み、休憩を挟んで生徒がご両親達をおもてなす内容に……って、ちょっとまって! 義両親の事で頭がいっぱいで、授業の内容までは把握していなかった。
臨時に誂えられたテーブルセットに両親達を案内し、一人苦悩するなか時間だけが進んで行く。
「あら、今日はどんなお茶を頂けるのかしら?」
目の前の女性、つまり私のお義母様がお茶の催促をしてくる。
別に望んだわけではないが、生徒達はそれぞれ自分の両親に接待しているのだから、自然と余った私が王妃様の接待役となった訳だが……今普通に私の前に来て当然のように座ったよね!
仲良し五人組の親が一つのテーブルを囲んでいるのだが、ここだけ明らかに空気が違う。
そういえばパフィオさんの両親って伯爵様……あー、普通にパフィオさんのお母さんと世間話をしているや。
「今日は知らせてくださってありがとうございます。うちの子ったら今日の事を教えてくれなかったんですのよ」
「まぁ、でもそれは気を使われたのではないですか? フローラ様は何分お忙しい身であらせらせられますので」
って、情報の発信源はパフィオさんのお母様ですかぁ!!
話を聞いていたパフィオさんが申し訳なさそうにこちらに視線を送ってくる。
盲点だった、まさかパフィオさんの両親から伝わるとは。
そういえば最近よくパフィオさんお母さんとお茶をしている姿を見かけたっけ。お茶会はご婦人達の趣味だと思っていたので、すっかり失念してしまっていた。
「それで、どちらがココリナさんのご両親で?」
いきなり名前を呼ばれ、いつやぞのココリナちゃんと同じ反応をする一組の夫婦。
って、お義母様隠すつもりはないんですか!
「それじゃこちらがカトレアさんのご両親なんですね。いつも娘がお世話になっております」
辛うじて挨拶をされたのを確かめ、残った一組の夫婦に対して挨拶をするお義母様。いきなり娘がどうのって混乱させるだけじゃないですか。
リリアナさんの両親とは以前ライラック家に行かれた際にでも会われたのだろう、軽く会釈をされてにこやかに返されている。
「あのー、その娘というのは……」
恐る恐るココリナちゃんの両親が尋ねるも、このメンバーで私の事を知らないのは二組の夫婦だけであろう。今更ながらなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「あら、ごめんなさい。私ったら自分のことばかり。改めまして、アリスの母親でございます」
ブフーーッ
「ちょっ、お義母様、それ直球すぎ! それだけだと変な誤解を生んじゃうでしょ」
私だってココリナちゃん達に説明するのにちゃんと血が繋がっていない事や、両親が亡くなっている事を話した上で、ここまで育てて頂いたと状況説明をしているんだ。
それなのに今のお義母様の説明だと、私が実は王女様や隠し子などと勘違いしてくれと言っているようなもの。
ココリナちゃん達のに手伝ってもらい何とか全員にわかってもらえたが、この時点で私の体力ゲージはほぼゼロの状態。
この後散々と親バカを発揮し、以外とすんなり溶け込めた母親軍団を横目に完全に萎縮してしまっている父親軍団。この場にお義父様がいなかった事は心底感謝するのだった。
追伸:ミリィの気持ちが少しわかりました。