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出版社回りの昔話

 私がデビューした頃のラノベ作家は、出版社回りに専念していました。
 いま、ラノベでデビューするには、お目当てのレーベルの新人賞(電撃なら電撃大賞とか)で、何かの賞を取っていなければ、まず100%、デビューすることはできません。ですが私がデビューしたのは1988年、まだバブル景気の頃です。企画書やあらすじを持って、回りました。そして私の場合、ことごとく失敗しました。
 もう時効だと思うので、実名で言えるものは言いますが、MOE文庫スイートハートの編集者は、「すぐに映像化できる企画が欲しい」、と言いました。MOEというのは「萌え」とは違って、永田萌さんという、有名な絵本作家の名前から採ったものです。その永田萌さんの名前から採った、「MOE」という雑誌を出すために作られた出版社が、MOE出版、というわけです。
 私が行ったときには、その文庫ラインナップで、「もうひとつの原宿物語」というラノベが映画化されており、それを踏まえての発言だっただろう、と思います。
 ただ、担当者の方は、とても親切な方で、持ち込みに失敗した後も、相談に乗って下さったり、ありがたい対応をして下さいました。
 ソノラマ文庫の石井編集長は、いまのラノベの形を作ったとも言える、大物編集長でしたが、私が原稿を見せると、「もっと民俗学の知識を勉強した方がいい」、というアドバイスを下さいました。それから10年ぐらい経って、もう持ち込みの時代でもなくなった頃、いまここで連載している「神の冬、花の春」と同じ水淵季里(書き忘れましたが、「みなぶち・きり」です)やその他の人物が活躍する「精霊海流」という原稿を持ち込んだところ、OKが出て、直しの後、出していただきました。10年の約束を双方とも果たして、大変ありがたいことでした。
 そうかと思えば……いや、この話はちょっと長くなるな。次回に回しましょう。
 まあ、いいこともあれば、そうでないこともある、というようなお話です。

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