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酒見賢一先生のご冥福をお祈りいたします

酒見賢一先生が、先週お亡くなりになっていました……。

ものすごいショックです。
まだお若いと思っていたのに……。

中華ファンタジーの世界を切り拓いた「後宮小説」といい、諸子百家の中で教科書にも載らないマイナーな墨者を取り上げた「墨攻」といい、後の小説界に多大な影響を与えた方だと思います。
とてもとても尊敬していました。

いまでこそ、中華ファンタジーはラノベの一大勢力ですが、彼がその始祖といってよいのです。

どこの世界に、全くの嘘の中国関係の歴史書を三冊も持ち出して、三人称視点でありもしない中国の歴史を描こうとするでしょうか?
しかも、後宮を舞台に、宮女たちの青春を描くとか、無茶な話です。
 
ひとつも真実の歴史を描かずに、そこにまるで史実のようにドラマを描く筆力、歴史小説の体裁で描かれたファンタジー。
小説とはどこまでも嘘を描いて良いとした、実験のような小説でありながら、そこに描かれた人物は、とても魅力的で、ものすごく高い完成度でした。

また、超マイナーな墨子、墨者を扱った「墨攻」はアニメ化、映画化もされ、多くの人々に愛された作品でした。僕も、これで墨子の思想を知り、のめり込みました。

オランダ独立戦争のハールレム攻防戦を扱ったボクの「古文書屋文玲堂」は「墨攻」からの大きな影響を受けています。

ハールレム攻防戦の史実や、当時最新であったプロテスタントの考え方、そしてその後のオランダで起こる技術革新から、何らかの原因で墨子の思想が西洋に流れたとしか思えない記述がたくさんみつかり、それをどうしても小説にしたかったのです。

ですが、最初はどうしてもうまくいかず、「後宮小説」のように歴史書ならぬ、欧州で発見された侍の書付の翻訳という形で書き始めたところ、とてもスムーズに行きました。嘘のつき方を教えてもらいました。

彼の切り拓いた延長線上に多くの作品が存在します。
ある意味、小説家の可能性を広げた方とも言えます。
ものすごい作家さんなのです。

ただただ、ご冥福をお祈りいたします。

古文書屋文玲堂、もう少し改稿してみよっと。

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