新春のお慶びを申し上げます。
あるいは、寒中お見舞い申し上げます。
昨年中は色々書いたし読んでもいただけて、とても楽しく過ごしました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
楽しく書いたり読んだりできたら嬉しいな、と思います。
皆様にとっても今年が素敵な一年になりますように!
さて、以下は大須さんと角くんの小話です。
彼らが二人で出かける初詣は三年目だったりします。
*
神社の近くでの待ち合わせに、俺は少し早く到着してしまった。新年二日目の空気はきりりと引き締まるほどに冷たく、吐く息は白い。やわやわとした陽射しは眩しいけれど、空気がぬかるむほど強くはない。
こうやって待ち合わせするのだってもう数えきれないほどやっているのに、こういうときは未だに緊張する。ちゃんと来てくれるかな、俺の格好変じゃないかな、浮かれすぎて挙動不審になってないかな。不安はたくさんだ。
そのくせ、瑠々ちゃんの姿を見てしまったら、全部吹き飛ぶくらいに嬉しくなってしまう。いったい自分はいつになったらこの状況──つまり瑠々ちゃんと恋人同士だという今に慣れることができるんだろう。それとも慣れないままの方が幸せなのだろうか。
「ごめんね、待つの寒かったでしょ」
小走りに近づいてきた瑠々ちゃんが、俺を見上げて首を傾ける。こぼれ落ちた髪がマフラーの上で踊って、白い息が広がる。俺は微笑んで首を振った。
「俺が早く来すぎちゃっただけだから」
「角くん、いつもそう言うよね」
小動物めいた視線で見上げられて、俺は苦笑する。
「だって、本当にそうなんだよ。待ち合わせ、どうしても早めに着いちゃうんだ、つい」
瑠々ちゃんは何度か瞬きをしてから、笑ってくれた。
「なんだか、角くんらしいって思っちゃった」
それから不意に真面目な顔をして、ボドゲの終わりのように背筋を伸ばした。それで俺も背筋を伸ばして向かい合う。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、あけましておめでとうございます」
挨拶自体は通話でしていたけど、顔を合わせたから改めて。二人で下げていた頭を上げると、目があって笑い合う。
それで手を繋いで歩き出す。神社に向かう人の流れに乗って。
周囲には正月らしく着物姿の人もいて、瑠々ちゃんは「ちょっと着てみたいな」なんて言ったりして、俺は着物姿の瑠々ちゃんを思い出す。あれは、そう、二人で『御朱印集め』ってボードゲームを遊んで、中に入り込んだときだ。
あのゲームの中では、二人とも着物姿になってお寺や神社を巡ったんだった。高校の頃を懐かしく思い出す。
「前も似合ってたし、また見たいな」
瑠々ちゃんは驚いたように俺の顔をじっと見てから、恥ずかしがるようにうつむいた。
「現実だと、着物は簡単には着れないから」
照れなのか寒さのせいか、瑠々ちゃんの白い顔がほんのり赤く染まっている。手袋越しでも、瑠々ちゃんの手のぬくもりを感じる。
こんなふうに二人でいられることが嬉しくて、気の早いことに俺はもう今年は良い年になると、そんな気がしていた。