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SS70

今回の公開内容

没含め雑多「ミカミカミ北風編二話の没冒頭」



 暖炉の前でレオはぼんやりしていた。
 ふさふさの鬣に強靭な四肢。勇ましい顔つき。
 鏡に映る姿全てが、かつて輝いた太陽の聖獣のままなのだ。
 多少色褪せた気はするが、そこは横に置いておく。
 
(レオしゃま、ふかふかでしゅねー)
 
 寄りかかるのは少女の姿をした妖精――ホアルゥだ。
 彼女自身も充分に温かいのだが、憧れの存在に近寄るための口実である。
 それを宙に浮かぶアトミスが、羨ましそうに眺めていた。
 
「レオってあんな感じだったんだな」
「威厳ある圧は変わりませんが……」
 
 妖精達に囲まれているレオは、どう見ても肩乗り仔猫サイズだった。
 手の平に座れてしまうホアルゥよりは大きいが、仔犬であるメザマシ二世より少し小さい。
 そのせいかメザマシ二世が近づくと、全身の毛を逆立てて高所へ逃げるのだ。
 
「俺の意識内部では、普通の獅子くらいの大きさだったんだけど」
「やはり魔人のせいですね! 今度会ったら叩き斬りますか?」
「お、俺はまず話し合いしたいけど……」
 
 鼻息が荒いクリスは、愛用の儀礼槍を両手に掴んでいる。
 今にも目の前にある机を壊しそうな勢いなので、ミカはしどろもどろな返事しかできない。
 どうにもクリスだけでなく、ヤーの様子も少し変なのだ。
 
「そうね。あの女にはたっぷり話を聞かないと……」
 
 言葉としては意気込みを感じられるが、表情は妙に冴えない。
 ミカが彼女の魂を視ても、色合いがぐるぐると回っているのだ。
 なにかに悩んでいるが、その内容が多すぎて感情が決まらないのだろう。
 
「わかりました、見つけ次第捕まえます!」
「う、うん……お手柔らかにね」
 
 そんな会話をしている内に、オウガは支度を終えていた。
 自前の武器である長槍太刀を抱え、着替えを詰め込んだ簡素な布袋を手に持っている。
 
「それにしても北かよ……」
 
 部屋の窓から庭を眺める。
 降り積もる雪が光景を真っ白に染め、今も止む様子がない。
 灰色の雲から絶え間なく白が零れ、地面を埋めていく。
 
「ここよりも寒いのかぁ」

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