今回の公開内容
ミカミカミ「モテ期キター？」
「あの、もしもよければ今度の休日——」
愛らしい外見の女性が、勇気を振り絞ってオウガを誘う。
その光景を物陰から眺めていたアトミスとホァルウは、意地悪な笑みを浮かべる。
（やるじゃないか、色男）
（モテモテでしゅねぇ！）
「……」
オウガは気まずそうに黙っている。
誘いを断った。今週だけで五件目。
中には過激な女性が「私より王子がいいの！？ このホモ野郎！」と罵ってきた。
健全な青年として女性と時間を過ごしたい欲求はある。
しかしそれ以上に鍛錬と仕事に専念したい、いわゆる脳筋思考が彼の中心に近かった。
もっと強く。それがオウガにとって軸なのだ。
「せめて差し入れにしてくれねぇかなぁ」
（贅沢さんでしゅね）
（腹ペコなんじゃないか？）
事あるごとに休日の誘いなのだ。
中には泊まりを提案する大胆な女性もおり、困ってしまう。
「多分、俺のせいかな」
後ろから声をかけてきたミカに、オウガはゆっくりと振り向く。
妖精だけでなく、ミカ達も物陰から覗いていたのを知っていた。
あえて放置したのは、勇気を出した少女に恥をかかせないためだ。
「ほら、うっかり俺が口にして腹痛とか起こしたら大変だから」
「オウガ自身にもなにかあったら一大事なのよ」
「お二人とも大切な体ですから！」
クリスの言い方に、ヤーがわずかに思案した。
訂正するほどではないと判断し、曖昧な笑みを浮かべる。
「好かれるっていいことだよ」
「お前が言うと重い気がするんだがよ」
ミカが朗らかに笑うが、受け止めるには彼の過去が深すぎる。
「それに俺よりもクリスの方がモテるよな？」
「え？」
きょとん、とクリスが首を傾げた。
なにもわかっていない、無垢な表情。
それが彼女の魅力を引き立てる。
「……クリスは今週で何回？」
「十回は声をかけられてるが、ことごとく天然で躱してやがるんだよ」
「なんの話でしょう？」
「あははは」
乾いた笑いで誤魔化すミカだが、クリス以外には通じていなかった。
（でもヤーさんもモテましゅよね？）
「はあ！？」
（確かに。遠巻きに眺めてる奴が多いけど）
「なにそれ！？」
動揺するヤーが、慌ててミカへと振り向いた。
ぽやーん、と突っ立っている少年は、なにも考えていなさそうだ。
「つまり皆モテ期ってやつかな？」
「その単語は誰に聞いたんだよ？」
「ミミィとリリィ」
三人の従者の恋模様を、まるで他人事のように見守る第五王子であった。