今回の公開内容
バシリス・クライム「アイラブクッション」
「可愛いクッション買いに行こうと思うんだけど」
何故、それを俺に言うんだ多々良ララ。
いやもう好きに買えばいいじゃないか。
俺――雑賀サイタに助言を求めても無意味だぞ。
「猫クッションとかどうかなって」
「犬じゃないのか?」
猫も好きだが、犬もいい。
クッションとかだと犬系が好みだったりするんだが、そこら辺は個人差か。
「こう……黒くて小さくて……左目の上あたりに傷があるといいなって」
「売り物に傷がついたらダメだろ」
何故、俺を見て言うのか。
傷ものを買うんじゃない。それにマニアックすぎるだろ、それ。
「僕はペンギンぬいぐるみほしい!」
急に会話に入ってきた鏡テオが、新しい案を出してきた。
うん、悪くない。ペンギンはむしろセンスがあるかもしれないな。
「クルリは?」
「……鮫」
話題を振られた枢クルリの意見に、俺は衝撃を受ける。
そんなクッションがあるのか。
携帯電話のネット機能使って調べたら、確かにおしゃれっぽいのがヒットした。
「鮫……いいな」
大きさも色々あるらしく、人気だとか。
この体がすっぽり入るのも、気持ちよさそうだな。
まあどう見ても食われてる図なんだがな。それがまたいい。
「じゃあヤマトは?」
「俺は兎っすね。妹が喜ぶんで」
そういえば大和ヤマトは大家族の真ん中くらいだったか。
妹目線で考えられるいいお兄ちゃんだな。
俺はあのわがまま妹ズのことなど、なるべく気を遣わないつもりだから忘れてた。
「次はヤクモー!」
「わ、私か!? ふむ……王道のテディベアだろうか」
「無難」
「普通」
枢クルリと多々良ララのコンビネーションが、天鳥ヤクモに鋭く決まった。
まあありきたりと言えばそうだけど、俺は悪くないと思うぜ。
ただ結婚式の引き出物で、新郎新婦の服を着たやつが頭に浮かぶがな。
「シュウは?」
「お兄さんはあまりそっちに詳しくなくてなぁ」
ずっと話を聞いていた青路シュウが少し困ったように笑っている。
まあ裕福な生活ではないから、そういうのを買う余裕がないのかもな。
「けど最近妹に流行りのぬいぐるみを渡したな」
「どんなのだよ?」
「アニメキャラクターらしい。もちもちしてるんだとか」
よーし、それ以上はやめよう。
なにかに引っかかりそうだからな。
そうしてぬいぐるみ談義は少しずつ横に逸れ、好きな動物の話へと移り変わっていくのだった。