今週の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「平日より疲れて楽しい休日」
生活地域が各々隔絶された時代。
しかし交流は最先端技術が解決し、インターネットが人々を繋げた。
そしてソーシャルネットワークが発展した末に、一つの奇跡が起きた。
『オリジナルアニメ映画、広告収入で百億円突破』
ネット上の記事で大きな文字にて掲載されたのは、『路地裏ニャルカさん』を手掛けた監督を頭に、有名アニメーターを揃えた話題作だった。
題名は『ワカル』というもので、最初は多くの動揺を呼んだ。しかし映画を見た者の大半が、題名を口にするだけで涙する。
全てはこの題名に込められており、意味を理解しない者は「ワカラナイ」とからかわれる始末だ。
「そんな話題作を知り合い集めて鑑賞するため、遮音殿の部屋を貸してほしいでござる」
「わかりかねる」
遮音の返答だけで、覗見はにんまりと笑う。
明らかに話題作を鑑賞した後だ。そう――ワカルという言葉を中心に、その汎用性がある単語を使う者が急増しているのだ。
わかっていないのは映画を見ていない真琴だけであり、困ったように笑みを浮かべている。
「前に映画のためのプロジェクターがどうとか言ってたから……駄目、かな?」
「家主の許可がいる。それに余計なおまけがついてくるぞ」
重い溜め息を吐き、遠くから睨んでいる双子の兄を顎で指す。
敵意強めな紫音の隣には茨木が立っており、怪しげながらも美しい微笑を浮かべていた。
「この映画の魅力を知れば、全ては些事でござる。さあさあ、定額配信による映画三昧で連休を潰すでござるよ!」
待ち構える三連休。その全てを使おうとしている覗見に対し、真琴は驚く。
彼らは全員高校生である。そして学生の連休には――課題が用意される。
一年の担任は比較的優しい方だが、宿題の量は甘えられるようなものではない。
「じゃあ金曜の夜に一気に宿題を終わらせるの?」
「主殿……月曜の朝までが連休でござる」
清々しい声音だったが、顔は哀愁に満ち溢れていた。
どう考えてもぎりぎりまでやらない、もしくは誰かを頼る前提の言葉である。
これにはさすがに真琴が苦渋の表情を浮かべ、諭すように告げる。
「遮音の家に泊まって、勉強会をしてもいいかな? 覗見の成績が心配だし」
「……はぁ。好きにしろ」
「ぬぐぐ。宿題制覇は予定外でござるが、目的が遂げられるならば犠牲はやむなし!」
「一応勉強は学生の権利であり、義務だからね?」
「では、拙者は他の者達にも声をかけてみるでござる!」
「は?」
覗見と真琴だけだと思っていた遮音が引き止める前に、あっという間に走り去っていくオタク忍者。
そうして予想以上の賑やかながらうるさい三連休が始まるのであった。