今週(先週)の公開内容
バシリス・クライム「アイスは食いっぱぐれた」
暑くて暇な時。男子高校生とは奇行に走る。
なんというかノリで。部屋の中で一人パンツ一丁で漫画を読んでいたら不意に。
いわゆる――必殺技を放ちたくなる。もしくは捻れたかっこいい立ち方。
黙々と体を起こし、一人暮らしという利点を活かしての小声。
「かーめー」
がちゃり、と。扉が開かれた。
おにぎりを作る時の手の形を腰の横に構えた状態で、俺――雑賀サイタは硬直した。
イケメン女子高生の多々良ララと視線が合う。少しずつ閉じられていく扉が、彼女の姿を隠していく。
音もなく静かに。部屋に一人残された。
とりあえずノックしてくれねぇかな。一応、女の子だろう。一人暮らしの男部屋へ軽率に入るな。
漢字Tシャツを着て、床に放置してた短パンを履く。大股で廊下へと出れば、壁に寄りかかっている多々良ララ。
「誰にも言うなよ!?」
「それはいいけど……」
口元を手で隠している多々良ララの背後からひょっこりと鏡テオ。
なんか嫌な予感がする。棒アイスを咥えている時点で、どうして禁断の扉が開かれたのかも理解した。
「ねえねえ、さっきのって有名な」
「解説するな!」
恥ずかしさで憤死させる気か。お袋に隠してたエロ本が見つけられた時よりも、恥辱で死にそうだ。
しかしキラキラしたオッドアイが、透明な硝子玉のように輝いている。話を逸らしたいのに、逃げられない気配。
「僕もやりたい!」
「やめてくれ!」
ここで耐えきれなくなった多々良ララが「ぶっは」と吹き出した。
このイケメン女子……ずっと笑いを堪えてやがったな。穴を掘ってこいつら全員埋めてやろうか。
穴があったら入りたいというが、俺は布団の中に直行したくなってきた。
「クルリは?」
「ぬなぁっ!?」
鏡テオが振り向いた先には、アイスを食い終えた枢クルリが立っていた。
はずれ棒を煙草のように咥えており、めっちゃ冷めた目をしている。やめろ、俺を見るな。
「……個人的には印を結ぶ方が好み」
「忍者! それも知ってる!」
「ヤマトは?」
おそらく三本目の棒アイスを食べ始めている大和ヤマトが、リビングから顔を覗かせた。
なんで話がそう広がっていくのか。まじでやめてほしい。
「魔眼とかっすかね」
「わかる」
枢クルリの力強い肯定。いやまあわかるけどよ。いいよな、能力が宿った目玉が光る演出。
このままそういう話で盛り上がるか。そうすればさっきのことも触れないで済むかもしれない。
希望が見えた。毒を食らわば皿までの覚悟を決めた矢先。
「じゃあまずは好きなヒロイン像から」
とある有名ゲームから発展した嫁問題。それについて熱い議論が勃発。
白熱した先に待っていたのは、イケメン女子の冷ややかな態度。
こしあん粒あん戦争並みの苛烈さは、鏡テオが土産に持ってきたアイスが溶けるほどだった。