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SS31

今週の公開内容

バシリス・クライム「あとで全員床で爆睡コース」



 まあ世の中には色んなゲームがあるわけで、歴史ものでさえプレイヤーの手にかかればとんでもない結末が待っている。
 そう。千利休がお茶によるお茶のためのお茶大国を築いたとしても。ゲームではそれが正史になるのだ。
 お茶っ葉の匂いに囲まれ、恍惚とした笑みを浮かべる美形変換された千利休。なんということでしょう、みたいな感じだ。
 
「天下統一したのってノブナガって人じゃないの?」
 
 鏡テオの素朴な問いに対し、枢クルリ以外の奴らが全員頷いた。
 ちなみに俺――雑賀サイタも力強く首を動かしている。多々良ララは頭を痛めている様子だし、さすがに大和ヤマトも渋い顔でおにぎりを食べている。
 ゲームの序盤から理解不能に陥った天鳥ヤクモなどは、ソファの上でうんうんと唸っている有様だ。
 
「お兄さん、あまりゲームとかやったことないんだけど……面白いね」
 
 大人な対応の青路シュウだが、笑顔が引きつっている。唇の端が痙攣するほどなので、相当無茶をしているな。
 そんなことも構わずに枢クルリは隠しキャラの卑弥呼を選択し、新たな歴史を紡ごうと試みていた。
 
「日本全土を邪馬台国にする気か?」
「占術による支配体制が続く日本を見てみたい」
 
 ちなみに最初の一週目ではガチプレイだった。攻略速度を競う動画用とかなんとか言っていたような。
 つまり二週目は千利休で遊び、三週目は卑弥呼で時代を超えた群雄割拠戦国時代的なんだとか。
 もうわけがわからんが、ゲームに没頭した枢クルリの操作テクニックは高等技術のように見応えがあった。
 
「これが終わったら次は松尾芭蕉による俳句ラップバトル開催予定」
「自由度高すぎるだろ!? どこの会社が作ったゲームだ、これ!」
 
 パッケージを見てみると、超有名会社の名前があった。ホビー関連でもよく聞くし、CMも盛んに放送されている。
 しかしゲームタイトルの『戦国乱れ斬り――時空混沌アシュラ』は初めて知った。とりあえずネーミングセンスがないのはわかった。
 
「企画段階でボツになりかけたはずなのに、悪ノリした末に販売されて三ヶ月で売り切れたまま消えた幻の一品」
「真面目にふざけて面白くなるやつか……」
 
 解説されてもよくわからないが、貴重なのは把握した。
 下手するとプレミア価格とかついてそうだが、怠惰な猫耳野郎にとってはあまり関係ないのだろう。
 結局ラップバトルを見終えた後、八人プレイによるサバイバル形式バトルで大盛り上がりしてしまった。
 
 たまにはそんな暇な一日も、いいもんだな。多分。

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