今週の公開内容
ミカミカミ「今度は俺も日向ぼっこしながら床でごろ寝しようかな」
「そういえば皆から見たレオってどんな感じなんだ?」
ちょっとした好奇心から出てきた言葉だったが、妖精達は即座に反応した。
(それはもう偉大な太陽の聖獣! かつて全ての大地と海を照らし、天に青をもたらした威光は伝説の域さ)
(天の二大にして勇壮なる獅子でしゅよ! 妖精ならば一度は会ってみたい御方でしゅし、憧れと羨望を集める素晴らしい聖獣様なんでしゅ!)
アトミスはまるで謳うように語らい、ホアルゥはテンションと勢いに任せて褒めちぎる。
普段は口喧嘩ばかりの二人ですら、レオに関しては意見が一致するのであった。
「よく昼寝してるよな」
しかし茶菓子を味わっていたオウガの一言に、妖精達がわずかに動揺した。
お茶の追加を準備していたクリスも、急須片手に参加する。
「そうですね。レオ殿は威厳や圧が強い方ですが、むらっ気もありますね。気が抜けてる時はとことんと言うか……」
「日向ぼっこしながら背中丸めて寝てる姿は猫そのものね」
本を膝に置いたヤーも呟く。庭先の花を眺めている内に眠気に誘われ、そのままころんと床に寝転がるの何度も見かけている。
オウガがベッドへ連れて行こうと触れればわずかに目を覚まし、朧な意識で移動してまたもや暖かい場所で眠る。
床から離れようとしないのでクリスがクッションや毛布を用意して、体に痛みが走らないように配慮するほどだ。
「立ち振る舞いは偉そうなんだが、めちゃくちゃ鈍い瞬間もあるしよ」
「おっちょこちょいなところが愛らしいと思いますが」
「なんだかんだでアンタに似てるわよ、ミカ」
苦笑するヤーだったが、柔らかい雰囲気をまとっていた。オウガやクリスも同様である。
妖精達がなんとかレオを賞賛しようと試みるが、日常の中で垣間見る彼のとぼけた姿がどうしても頭をよぎる。
尊敬する心は失われていないが、想像よりも親しみやすい元太陽の聖獣。抱えていたイメージはがらりと変わっていた。
「……そっか。まあ俺の前世だもんな」
少しだけ嬉しそうに笑うミカは、意識内部にも届くように返事する。
一面の空が広がる場所で、船を寝床に微睡んでいた獅子が欠伸を零した。
(それでもミカはミカだ。我とは違う道を進むだろうよ)
あったかもしれない刹那の時間。穏やかな一瞬。
それは少年にとってかけがえのないもので、大切な思い出へと変わる。
いずれ訪れる災難を乗り越えるために必要な、優しい泡沫だった。