今週の公開内容
スチーム×マギカ「気は合わないが、息が合う」
部屋に閉じ込められて一時間。
魔法で壊そうと試みたこと約三十回。その全てが無駄だった。
真っ白な部屋にベッドが一つ。水差し一つとコップは二つ。お手洗い用の個室が一つ。
扉を力尽くで開けようと頑張ったのは約五十回。
なにをしても手応えがない。ただ扉には小さな紙が貼りつけられていた。
それはお題ともいうべき内容で、アルトとユーナが思い悩む要因である。
【お互いのいい部分を五つ言わないと出られません】
ちなみにまだ一つも出ていない。
呆れるくらいの長考と気まずい空気。
ベッドに腰かけながら、二人は云々と唸っていた。
「野蛮猿の」
「姫さんの」
『いいところ?』
声が揃ったが、二人の表情は深刻さを増していた。
さっさと部屋から出ようにも、奇妙な仕掛けが働いているらしいという当たり前の事実だけ。
五つくらいならばと観念したが、一向に思い浮かばない。
「俺様、普通にイケメンだろ?」
「寝言は寝てから仰ってくださいな」
一蹴。
「わたくしは魔導士として優秀だと思いますけど?」
「人間として駄目だろう」
即断。
自己分析からお勧めを提案しても、即時却下の繰り返し。
ここまでくると相性の最高と最悪の区別もつかない。苛立ちが頂点へ駆け上がろうとした矢先だ。
「出られないけど、出してはもらえない――わけではないですわ」
「男前達が俺様達を探していれば、いつかは脱出できる」
他力本願。しかしそれ以上の良案が皆無だと、両者が通じ合った瞬間である。
意気投合し、争いもせず、ただひたすら待ちの姿勢。二人の心は一つになった。
――この部屋の主人をタコ殴りにしよう。
そして三時間後。私立探偵の活躍により解放された二人は、周囲が驚愕するほどの見事な連携を披露。
偶然生まれた魔道具である部屋――その持ち主である男は、全治三ヶ月。入院を余儀なくされた。
なお後日、別の二人がまた閉じ込められるのだが……それは違う話である。