今週(先週)の公開内容
バシリス・クライム「属性盛れば萌えると思ってんじゃねえょ」
「おかえりなさいませ、御主人様」
メイドがいた。金髪で、長身の。
俺――雑賀サイタは阿呆面さらして、見上げるしかない。顎の筋肉は力が入らず、間抜けな開口状態。
ミニスカから覗く太腿はむっきりしている。むっちり、ではない。それはもう筋繊維の塊かなというくらい太い。
「どうっすか?」
金髪筋肉アルバイター後輩――大和ヤマトがミニスカメイドだった。
玄関で膝から崩れ落ちたぞ、おい。まじでふざけんなよ。こちとら思春期真っ盛りの男子高校生だぞ。
せめてここは多々良ララがやるべきじゃねぇのかよぉっ! 畜生が!!
「どうされましたか、御主人様?」
噂のイケメン女子が執事姿でお出迎え。逆だろう。
しかし似合うな。俺が女だったら必殺技を受けた悪役みたいにノックダウンだ。
ただ目が死んでいる。この配役に明らかな不満を抱いている。
「体育祭の余興用の衣装っす。男女で衣装交換をテーマに、男女平等を掲げて世界平和を広めようとする……らしいっす」
「高校生になると知能指数って低下するんだっけか?」
中学生の方がまだ賢い気がする。小学生だって呆れる内容だ。
「というわけで、どうぞっす」
そっと渡されたのはお揃いのミニスカメイド衣装。Sサイズとタグに書かれており、投げ飛ばしたい衝動に駆られた。
しかも男用のニーハイソックスまで用意してんじゃねぇ。準備万端すぎて気持ち悪い。
「あ、サイタ! 一緒に写真を撮ろう!」
「…………」
だが俺がブチ切れる前に、セカンドインパクトがサードも連れてきやがった。
可愛いフリフリメイド服を着た鏡テオが、猫耳メイドな枢クルリの背中に抱きついている。
ゴシック系なメイド服はオシャレだし、鏡テオの中性的な雰囲気によく似合っている。だけど、そいつも男だ。
ちなみに枢クルリに関しては哀れと思うしかない。笑いよりも同情が勝る。
それは本人も自覚しているのか。決して目を合わせようとしない。長スカートなのは最後の意地なのだろうか。
メイドになっても猫耳だけは譲らない、その鋼の精神には称賛を送っておこう。
「衣装係だったんで、ほつれがないか確かめてもらってたら……楽しくなって、つい」
「まあ、あまり他人に押しつけんなよ」
「ういっす。了解っす」
大和ヤマトは自己主張が控えめな方だ。そんな奴が楽しいと勧めるなら、仕方ない。たまには乗っかってやるか。
五分後。俺は自分のミニスカ姿の酷さに鏡を割りたくなるのであった。