今週(先々週)の公開内容
誠の友情は真実の愛より難しい「TSドリームPart5」
この夢はいつ覚めるのだろうか。
現実とは男女逆転の世界。違和感だけが肥大化していく。
「ああ、ここにいたんだね」
気軽な調子で声をかけてきたのは、リー・茨木だった。
深い緑色の髪が風に揺れ、深紅の瞳が真琴を捉えて離さない。
白い肌の上に赤いブレザーと――ズボン。
「……どうして?」
異様な状況に慣れたせいか、当たり前な事実に動揺した。
目の前にいたのは「少年」の茨木だった。彼の足元には瓜二つの少女。
深緑の長い髪が地面に広がり、薄く開かれた瞼から覗くのは深い紅の瞳。赤いブレザーとスカートは所々破けている。
「君が反撃したせいだよ。覚えていないのかい?」
そう問われても、なにも思い出せない。ただ何故か強く、ここは夢だと決めつけている。
呆れたように溜め息をつく茨木は、真琴の背後を指差す。
「敵はそこだよ」
振り向くのが怖い。けれど無視することができなかった。
夢だという強迫観念にも似た感情のせいなのか、早く起きなくてはいけない気がした。
息が詰まりそうな緊張感に身を震わせながら、足を動かす。
uyw@?
それはもはや覗見ではなく、人間という形すら諦めていた。
声は言葉にならず、形状しがたい音の響きが恐怖を呼び起こす。
頭が痛い。なのに目覚めない。口が開いては閉じるのを繰り返し、呼吸すらままならない。
「概念寄生体という名称もあるらしいけど、創作界隈ではこう呼ぶらしいよ」
特に慌てた様子もなく、茨木はのんびりと告げる。
「邪神」
ラノベで美少女化されたのを見た覚えがある。
どうでもいい記憶により、少しだけ恐怖が緩和された。
しかし目の前の脅威は想像よりも生々しく、鮮烈な邪悪さを身にまとっていた。
「倒し方は?」
「専門外。むしろジャンル違いじゃないかな」
お手上げ状態。優等生すら笑顔で匙を投げた。
泣きそうな気持ちで一歩ずつ後退するが、それは同じ歩数でにじり寄ってくる。
蛸を巨大な化け物にした容姿。生臭さで吐きそうになり、醜悪な外見には嫌悪しか湧かない。
「というか、僕が反撃したせいって……」
「不可視の攻撃で、僕も気付けなかったのに。君の能力保有プレートは色んな意味で厄介だね」
そう言って茨木が指さしたのは、赤いブレザーの胸元。
銀色に光るそれは【反撃先取】という白文字を強く輝かせていた。