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SS7

今週(先週)の公開内容

バシリス・クライム「テーブルの上で冒険を」


 TRPGって知っているか? まあ俺――雑賀サイタも十分前に教えてもらったとこなんだが。
 賽子を振って遊ぶシナリオゲームだとか。まあ試しに、ということでゲームマスターもしくはゲームキーパー的なのを枢クルリが担うと。
 参加者は五人。俺と、多々良ララに鏡テオ。後は大和ヤマトと天鳥ヤクモだ。
 
 全員初心者である。不安しかない。
 特に枢クルリが密やかに不敵な笑みを浮かべていたのがかなり気になる。
 
 一時間後。俺と天鳥ヤクモがロスト――シナリオ上の死亡扱い。
 多々良ララはダメージを受けすぎて、気絶判定で失敗したらしい。とにかく動けないとか。
 しかし大和ヤマトは技能的に活躍しまくっている。鏡テオは賽子の出目が驚異的に良いのだとか。
 
「過酷戦闘ありのロスト必須シナリオ選んで正解。超楽しい」
「おい、猫耳野郎。クリアさせる気あるのか?」
「シナリオ的には可能」
 
 言いながら進行を淡々とこなしていく猫耳野郎。そつがないのはさすがだけどよ。
 どうやら大和ヤマトが多々良ララを背負い、次の部屋へ向かうのだとか。
 意外と想像できるもんだな。地図とか、簡易状況図を用意していた手際には感心するぜ。
 
「私はファンブル……? を連発したのが駄目だったとか、よくわからん」
 
 頭を抱える天鳥ヤクモは、深々と息を吐いた。こいつの賽子の出目に関しては爆笑しかなかった。
 ことごとく致命的失敗を繰り出し、最終的には自滅していた。いやー、その状況を詳しく他人に教えることができないのが惜しいくらいだ。
 
「この部屋って特徴的なのある?」
「目星を振って成功すれば詳細情報を開示する」
「わかった。えーい!」
 
 二つの賽子が転がる。一から百の出目と、あらかじめ決めていたステータス数値と照らし合わせるとのことだが。
 スペシャル成功というのを繰り出した鏡テオに、枢クルリが部屋の説明をしていく。
 
「じゃあ扉を壊せば良いのかな。ヤマトできそう?」
「ういっす。じゃあ技能のこれを使って……どうっすか?」
「成功。おめでとう。三人が時間内に脱出できました」
 
 やる気のない拍手を送る枢クルリの宣言により、ゲームクリアとなった。
 
「次はもっと楽なの用意しろよ?」
「ロストなしで頼む」

 俺達二人の意見は通ったのか、次のシナリオは探索を主としたものだったが。
 致命的失敗を繰り返した天鳥ヤクモが、またもや自滅するのは別の話である。

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