好きな作家さんを真似て、「血が流れない、事件性のないミステリー」を書いてみたいと思っていました。しかし、はたして自分にミステリーを書くことができるのだろうか、という不安があり、書くまでには至りませんでした。謎を解くのは好きでしたが、謎を考えられない──つまるところネタがないのが、一番の理由で……。
そんなとき、書店で見かけ以前から気になっていた「色を扱った本」を手に取ったことで、物語が動き始めました。色の名前、由来を知り、ミステリーに求められる「謎」が自然に浮かんできました。
短く、一話で完結、は最初から決めていたので、あとはスムーズに進み、そうして書き上げたのが『いろのひめごと』です。
完成したらしたで、今度は「これがミステリーなのだろうか?」という新たな不安が浮かんだものの、やりとげたことで気持ちは晴れやかです。