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    固定されたコレクション

    多世界解釈の附録、あるいは屋根裏の量子力学

    【エッセイ・人生論】人生という名の不確定な波を、言葉で「観測」し、固定する。 これは、一人の男が「余命宣告を受けた時から執筆開始する」と決めている本編の、あまりに饒舌で切実な「附録」である。 一九八X年、消しゴムで刃を封印したバタフライナイフを握りしめていた坊主頭の中学生。 一九九X年、東京の地下編集室でフィルムの断片を繋ぎ合わせていた青年。 そして二〇二六年、福島で息子の横顔を見つめながら、ドラえもんの映画に「未来の責任」を読み取る父。 著者は、量子力学の「観測」という視点を持ち込み、バラバラに散らばった過去の挫折や停滞を、いまここで「必要な伏線」へと書き換えていく。 中二病という名の量子テレポート: 現実が一つしかないという傲慢さを拒絶し、別の世界線を夢想し続けた記録。 フィルムの切断と再生: 映画、音楽、文学。表現の荒波に揉まれ、一度は「波」の底に沈んだ観測装置が、再びキーボードを叩き始めるまでの軌跡。 家族という共鳴体: 息子「春馬くん」との日常に潜む、時間を跨いだ関係の再接続。 「人生に無駄なカットなど一つもない」 そう言い切る著者の筆致は、冷徹な物理法則と、湿り気を帯びた個人の記憶を、見事な三連符の旋律で調和させていく。 これは、自分自身の人生を「左利き用」にカスタムし、最高だと定義し続けるための、極私的で哲学的な反乱の記録である。

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