小説を書くということは本当に楽しい。
いや、苦しいことでもある。だが、それはおく。
昨日と今日は、その苦しみと楽しみを、どちらも存分に味わえた。
苦しみとは、劇的な展開を考えるということ、どうしたら面白くなるかということ、敵の考えることが合理的かどうかということ、時代考証、その他もろもろ。
楽しみとは、やはり自分で「面白い!!」と思える展開やキャラが書けたことだろう。
笑いながら書いたシーンがいくつもある。本当に面白い、と腹の底から思いながら筆を進めるのは、快である。
そして何より、書きながら、様々な役割を物語のなかで生きられるということ。
この楽しみに勝るものはない。
このことは、アヌビスとラーの会話を書きながら感じた。
アヌビスは、母に捨てられた少年で、母への怒りを抱えている。俺はそれを書きながら共感し、追体験する。
ラーは、アヌビスにあれこれと助言をする。それはすべて俺の言葉だ。俺は書きながらアヌビスに助言をしたり、応援をしたりしている。
レンシュドラは、アヌビスのはじめての友達だ。俺は彼を通じてアヌビスとの掛け合いを楽しんでいる。
ハウランはアヌビスのもう一人の師匠。俺は彼を通じてアヌビスにワルくてだらしなくて豪快な大人の一面を見せることを楽しむ。
ホルスはアヌビスのライバルで、お互いに凄いと認め合っているが、嫌い合っている。俺は彼を通じてアヌビスへの嫉妬を楽しんでいる。
小説を書くことで、いろんなキャラクターとして生きられること。
これが創作の楽しさだったのか、と人生初の連載長編を書いてみて初めてわかった。
「この小説の世界で生きている」、そんな実感を得られるのは、作者の特権である。
そして、自分のいろんな側面が、めいめいに会話し、関係し、影響を及ぼし合うことが、本当に面白い。
これは創作者あるあるだと思うのだが、すべてのキャラクターが子供のように思える。
子沢山になった気分だ。