本日より『姫様と秘密の恋人の文がみつかってから』を始めます。
(火)(金)の予定です。
ご覧いただけますと嬉しいです。
こちらは、拙作『宰相の君は、姫君のお付き女房』のスピンオフ的位置づけの作品になります。
ですが、上記をお読みいただかなくても、今作のみでお楽しみいただける構成となっております。
また、前作をお読みいただけた方には、新たな発見をしていただけると思っております(しょってます)。
よろしくお願いいたします(*^^*)
◇◇
さて、第一話についての、お話を少し。
祥姫に贈られた恋文は、紅梅襲(かさね)という紅い色の料紙(便箋)でしたが、色彩感覚に命を懸ける平安貴族の面目にかけて、襲の色目には厳密な使用時期があります。
これ外すとセンスなしと見なされるのは『枕草子〈すさまじきもの〉』によく知られています。
第一話では、木葉は紅梅色を見て「恋」を想起していますが、では、色目が恋情などの心情を表す手段として用いられたのでしょうか?
少し時代が下るのですが、慈円の家集『拾玉集』にある、仲良しの源頼朝との贈答歌の内の一つを挙げてみます。
〈礼紙に紅梅の檀紙をしたれば かく言ひ遣す
折ならで 包みこめたる 梅の花 心の色を 見するなるべし〉
(文の包み紙に紅梅の色目の紙使ってたから、こう言って返したのさー。
キミが文を包んで寄こしたのは季節外れの紅梅だったじゃん。それってキミの心が表れてるから?)
と慈円が贈っています(超訳失礼)。
これは頼朝が季節違いの礼紙を使って、文を贈ってきたことを見とがめての歌です。
「レッドっつったら情熱だよね?!」という意図が表れされていますね。
つまり、なくはない、よね、というお話です(^-^;
ですが、こうした使い方は異例だと考えるのが適当だと思います。
ちなみに、上記の贈答歌、返す頼朝君は、
〈色も香も つつむ袖より 漏れ出づる 梅にはあらで 蓮華なるらん〉
(花の色も香りも、それを包む袖より漏れてるのがわからかなー。これは梅じゃなくてハスなんだよー)
と、誤魔化しています笑
この二人の贈答歌は、ラブラブ恋人同士の体裁ばかりなのでオススメです笑