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2024年11月03日の、植物文化図鑑の解説①

平素駄文を御覧いただきありがとうございます。

短編だった植物文化図鑑ですが、この度連載へと切り替えさせていただきました。今後、自分の生物学の知識を濫用しながら更新をしていきたいと思っています。

ここでは、現在までの4話についての解説を記載しておきます。

実は登場する植物には概ね参考となる生物が存在しており、本作品を読んだうえで、現実の自然界は摩訶不思議であるかということを改めて知ってもらえるとより深く作品を楽しめるかと思います。

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1.パルタエ
元ネタはセイヨウタンポポ(キク科タンポポ属, Taraxacum officinale)がもとになっています。ロゼット型は実際に路端の野草で見られる形態であり、タンポポはその代表的な存在と言えます。
また、キク科にはキク科ヒマワリ属のキクイモ(Helianthus tuberosus)が存在し、地下に大きな塊茎をもつ宿根草であり、欧州のやせ地や乾燥地帯で食用のほか、飼料、アルコールの原料などに利用されてきた歴史があります。
パルタエはエキ科と創作の科としていますが、今後もキク科のような多様性を元にして作品に登場させたいと思っています。

2.プラリケリアス
読んでいただいてなんとなくわかっていただけた方もいるかも知れませんが、元ネタはハオルチア属 (Haworthia)になります。原産地は南アフリカであり、過酷な条件で自生するのも同じです。
多年生草本で多肉植物であるハオルチアはその美しさから観賞用に幅広く栽培されていますが、実際に貧栄養等の条件で美しい透明な葉になります。その姿は宝石のようではありますが、条件によってはすぐ枯れてしまうことから「愚者の宝石」というインスピレーションが湧きました。

3.シベルテア湖
これに関しては特定の植物ではなく、微細藻類と窒素固定細菌の生物相の相互的な環境が生み出した一種の現象についての話になります。
特定の元ネタとなる生物がいるというわけではないですが、生態系のダイナミズムにおいて窒素固定というのは基礎中の基礎であり、地球の生態系のベースであるといえます。その生態系が局所的に牙を剥いたら、ということがコンセプトにあります。
筆者は生物工学の出身ですが、液体窒素が漏洩したときに倒れている人を助けに行ってはいけないというのはよく言われている話です。それほど窒素は身近でありながら恐ろしい存在であることの寓話として書かせていただきました。

4.バンバラルアの木
元ネタはトウダイグサ科のマンチニール(Manchineel, Hippomane mancinella)になります。世界中の植物の中でも最も危険なものの1つであるとされており、映画やオペラなどの創作に度々登場します。筆者は『ダンピアの冒険』で知りました。
BambatoxinはPhorbolの類縁体である設定であり、よりテルペン系の構造を含有するという設定にあります。死の小林檎という呼び名の通り、非常に危険な植物です。
毒鳥というのも元が存在し、ズグロモリモズ(モリモズ属, Pitohui )という鳥はヤドクガエルと似たバトラコトキシン類の猛毒を持つとされています。ピットフーイというのは鳥の鳴き声が元になっています。バンバラルアでは植物を摂食するとしていますが、ズグロモリモズは甲虫類から毒を摂取しているそうです。
それぞれ毒を持ちながらもニッチな生態系を持っているというのは、実際の生態系においても不思議で美しい存在であると言えます。

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この作品は二段構えの構造であり、最初に不思議な昔話を読んだ気分になっていただき、解説を読んでピースを当てはめたうえで不思議な世界だなと言うことを感じてもらえたら幸いです。

少し小難しい文章になってしまって申し訳ございませんが、拙作を優しい目で楽しんでいただければ幸いです。


では、次は物語の中でお会いしましょう。
良い旅を。

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