こんにちは。いしかわかなでです。
いつも『超絶美少女な四姉妹と家族になる方法。』をお読みいただきありがとうございます。
本作は音楽を一つの題材にしています。
第22話『喝采 (2) 』から栞の演奏シーンが本格的に始まっています。
栞がピアニストである設定上、今後も栞や葵の演奏シーンが作中に登場します。
音を文章で表現するのは想像以上に難しいです。
小説執筆を始めたばかりのわたしの手に負えないものだと痛感しています。
そこで、今回のエントリではYouTube上にある音源を皆様に紹介することで、わたしの至らない筆力を補完したいと思います。
小説本文を読んでもし興味をもたれた読者の方がいらっしゃれば、栞がどんな曲を演奏していたのかをぜひお聞きいただければと思います。
【#0022 喝采 (2)】
・ショパン 練習曲 Op.10-3 ホ長調 「別れの曲」
(演奏: ウラディミール・アシュケナージ)
https://www.youtube.com/watch?v=Ho4rczoOV4s 有名な曲だと思います。
楽曲の解説は基本的に作中で述べていますが、補足として1点だけ。
「別れの曲」という愛称は日本だけで呼ばれているものです。
海外では主に「Tristesse (悲しみ)」と呼ばれているみたいです。
【#0023 喝采 (3)】
・ショパン 練習曲 Op.10-4 嬰ハ短調
(演奏: マウリツィオ・ポリーニ)
https://www.youtube.com/watch?v=SpJLqxOXveQ 『のだめカンタービレ』で一般の方にも有名になった曲です。
当初、栞にはこの曲でなくOp.10-5『黒鍵』を弾かせるつもりでした。
ピアノを題材にした既存作品との曲の被りは避けようと思ったからです。
しかしある日、栞がこの鮮烈な10-4を弾く映像が思い浮かんでしまったのです。
栞の曲は10-4でしかありえない。そう思ってしまいました。
それだけ10-4は印象に残りやすい曲ということです……
ショパンの練習曲は、今後ストーリーが進むと再登場させるつもりです。
葵もどの曲かを弾くかも?
その時まで、わたしの執筆モチベーションが保たれていればの話ですが……
・リスト 超絶技巧練習曲 S.139 第8番 ハ短調「荒野の狩」
(演奏: エフゲニー・キーシン)
https://www.youtube.com/watch?v=crprL4skrY4 中3の女の子がこの曲を弾いてしまうのはえげつないことです。
栞の実力は作中でもトップクラスとして描写しているつもりです。
『荒野の狩』という訳題ですが、原題はドイツ語で『Wilde Jagd』というものでリスト自身がつけたものです。
クラシックの作曲家は自作に表題を積極的に与えたがる人と、あまり表題をつけない人に大別されます。
リストは前者、ショパンは後者だと思います。
リストは文学や宗教的題材にインスピレーションを得た作品を多く残しています。
12曲ある超絶技巧練習曲も、第2番と第10番を除いてすべてに表題がつけられています。
ちなみに、この曲の訳題はあまり一定しません。
単に『狩り』という場合もありますし、『荒々しい狩』と呼ばれる場合もあります。
私が最近購入した全音楽譜出版の楽譜では『死霊の狩』となっていました。
どうやら最近はこの曲をゲルマン神話に結び付けて、一般的な「狩の歌」とは一線を画すものと考える解釈(流儀?)があるようです。
ですが、わたしの肌感覚として『荒野の狩』という訳がまだ一般的だと思ったので本文中ではこちらの訳題を採用しました。
【#0024 喝采 (4)】
・リスト スペイン狂詩曲 S.254
(演奏: エフゲニー・キーシン)
https://www.youtube.com/watch?v=Pf12I4w3IxE 栞が初リサイタルの前半最後に弾いた、栞の十八番です。
こんな大曲を中3の女の子が弾いてしまうのは非現実的かもしれないと思われるかもしれません。
しかし、去年の某コンクールで高1の男の子が弾いた例をわたしは知っているので、あってもおかしくはないかなと思います。
最近の生徒さんたちはみなさんテクニックがおかしいですからね……
栞がノーミスで弾いたことで葵が驚愕した箇所は、動画の11分05秒からです。
キーシンは何回かミスタッチしていますが……
あとこの演奏、11分44秒からの高速な半音階で上下する箇所を1回多く弾いてしまっています。
楽譜からすると明らかな間違いですが、楽譜にない即興として許容できなくもない……? いや、ないですね。
ですが、そんな間違いなどなんのその。
わたしがYouTubeで一通り探して、いちばん感動的だと思ったスペイン狂詩曲の演奏がコレなのです。
【#0026 喝采 (6)】
・ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 作品27-2 嬰ハ短調「月光」第1楽章
(演奏: アルフレッド・ブレンデル)
https://www.youtube.com/watch?v=2PetYp2Z6co 栞の初リサイタル、後半最初の曲です。
4年前のコンクールで弾いたのは第3楽章だけですが、コンサートではソナタは全楽章通して弾くのが普通です。
なので、第1楽章から順を追って弾きながら回想をしてもらいました。
古典派ソナタの慣例に反して、おそい楽章から始まる特異なソナタです。
ですがベートーヴェンのオリジナルなアイデアではなくて、モーツァルトも実はピアノソナタ第11番でやっていたりします。
(モーツァルトのピアノソナタ第11番というのは……)
・ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 作品27-2 嬰ハ短調「月光」第2楽章
(演奏: アルフレッド・ブレンデル)
https://www.youtube.com/watch?v=bGi_8IfZ75M 栞が深夜に散歩しながら口ずさんでいる曲です。
メヌエットでもスケルツォでもない、どっちつかずというテンポの曲です。
「スケルツォ」という単語を本文中で出すかどうか迷いましたが、分かっていただける方はいないかもと思ってやめました。
ちなみに栞は補導されたことはありません。
【#0027 喝采 (7)】
・ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 作品27-2 嬰ハ短調「月光」第3楽章
(演奏: アルフレッド・ブレンデル)
https://www.youtube.com/watch?v=ieKRlajn2YA 栞が4年前に失敗した因縁の曲です。
栞がどういう思いを抱いて弾いていたかは作中の通りです。
このような激烈な最終楽章は、実はこの曲が初めてというわけではないです。
ベートーヴェンの一番最初のピアノソナタでは既に片鱗があります(
https://www.youtube.com/watch?v=nPVt2PoMmHs)。
ですが月光ソナタでは、楽章を通して絶え間なく続く16分音符が作り出す緊張感は稀有なものですし、楽章全体の統一的な構成に成功しています。
さらに、それが消えて突然現れる8分音符のリズムは大きな効果を生みます。
これこそベートーヴェンの進歩ですし、後につづく傑作『熱情』への伏線でもあるのです。
【#0029 君に捧げた歌 (2)】
・ベートーヴェン ピアノソナタ第26番 作品81a 変ホ長調 「告別」
(演奏: マウリツィオ・ポリーニ)
https://www.youtube.com/watch?v=9TXQSz_4AMY 回想形式ですが、コンサートで月光ソナタの後に弾いた曲です。
解説は本文中で記述した通りです。
このお話を書き始めるまで、ずっとこの曲のことをホ長調だと勘違いしていました。
当初は、別れの曲(ホ長調)-練習曲第4番(嬰ハ短調)-リストの2曲-月光ソナタ(嬰ハ短調)-告別ソナタ(ホ長調)、という具合にシンメトリーなプログラムを組んだつもりでした。
ホ長調と嬰ハ短調は平行調の関係ですし、とても綺麗だと思っていたのですが、告別ソナタの楽譜を確認してみるとなんとホ長調ではなく変ホ長調ではないですか……
ちょっとだけへこみましたけど、当初の予定通りのプログラムを採用しました。
・モーツァルト ピアノソナタ 第11番 K. 331 変イ長調 から 第3楽章 「トルコ行進曲」
(演奏: ダニエル・バレンボイム)
https://www.youtube.com/watch?v=E0Tur19bNho 栞のアンコール曲、そして葵が4年前のコンクールで演奏して優勝した曲です。
超有名曲です。
誰もが耳にしたことがあるのではないでしょうか?
単独で演奏されることも多いですが、実はモーツァルトのピアノソナタ第11番の一部分です。
そしてモーツァルトの11番というのは上で述べたように、第1楽章にいきなり緩徐楽章が登場する特異な形式をとっているソナタです。
つまり月光ソナタの生みの親……とまではいきませんが、おそらく叔父さんくらいの立ち位置でしょうか。
ベートーヴェンもおそらく参考にしたのかもしれません。
・シューマン=リスト 献呈 S. 566
(演奏: 佐藤卓史)
https://www.youtube.com/watch?v=jCukb6nKQb4 栞のアンコール曲です。
この曲も解説は本文中でした通りです。
クラシックでは、作曲家の他に編曲家がいる場合はよく二重ハイフン "=" で2人の名前を繋ぎます。
この場合は「シューマン=リスト」で「シューマン作曲、リスト編曲」という意味になります。
カクヨムやなろうの小説でもよく登場人物がピアノなど楽器を演奏したりしますが、やるならこのくらいはやってほしいという思いでここまで書いてきました。
その試みが必ずしも成功したとは言い難いですが、やりたかったことはひとまずできたというところです。
小説の執筆はやっぱり難しいですね……
【#0033 栞と旅行 (3)】
・ベートーヴェン 交響曲第9番 作品125 ニ短調「合唱付き」
(指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン 演奏: グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)、ヒルデ・レッセル=マイダン(アルト)、ヴァルデマール・クメント(テノール)、ヴァルター・ベリー(バリトン)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会合唱団)
https://youtu.be/QscuYmQgIM8 ご存じ、ベートーヴェンの第九です。
立石寺に向かう道中で栞と葵くんが第4楽章の中間部を口ずさんでいます。
動画中にはドイツ語の歌詞と日本語の訳詞が載っています。
わたしの小説中の訳詞は例によってわたしが辞書片手につくったものなので、当然動画中の訳とは異なっています。
第九は全4楽章からなる交響曲で、通して聴くと1時間以上はかかります。
そしてクライマックスの第4楽章は、それまでの3楽章の音楽を回想しつつも否定した上で「もっと心地よく歓喜に満ちた歌を歌おうではないか!」というバリトン歌手の独唱であの『歓喜の歌』が始まる、という構成になっています。
ちなみに、その冒頭のバリトンが歌う歌詞はシラーではなくベートーヴェンの作詞です。
この第4楽章だけでも30分くらいと長大ですが、一度くらいは聴いてみても良いのではないでしょうか。
一応、楽譜をもとに執筆しているのですが、もし作中の記述で間違っている点等あればご指摘いただけると助かります。
今後も作中に登場した楽曲は、この近況ノートに追記していく形で紹介していこうと思います。