ここは市立歌戯路小学校。その広々とした体育館で、全校朝会が始まろうとしていた。夏休みが明けたばかりで、まだ遊び足りないぼくだったが、これから先生たちの退屈な話を聞かされるのかと思うとイヤーな気分になる。
「『校長先生のお話』。校長先生、お願いします」
 ほらきた。いつも長ったらしい校長先生の話がきた。二秒で終わらないかなー。壇上に上がった校長先生が口を開く。
「夏休みが明けて、気温も秋めいてきましたね。とはいえまだ残暑が(中略)勉強の秋という言葉があるように(中略)この前食べた牛丼がおいしくて(中略)ワクチン2回目の副反応わりと大丈夫で(中略)みなさんルックバックは買いましたか?(中略)FGOの水着イベ楽しみですね(中略)さてお待たせしました。それではこれより、かぎろが主催した自主企画『第二回ドゥン大賞 最高の夏休み篇』の結果発表をおこないます。軽く参加作について語ったりもしますが、そのなかには参加作のネタバレを含みますのでご注意ください。
 企画のURL↓
https://kakuyomu.jp/user_events/16816700426421827336
 全作品一言感想置き場のURL↓
https://kakuyomu.jp/users/kagiro_/news/16816700426497774477
 さて、まずは大賞受賞作と特別賞受賞作の一覧を読み上げます。


★第二回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞★
あたし黒髪のようにとけそうな気がするさん『夏休みと桝田優衣で韻が踏める』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426502599253

★めちゃカワヒロイン賞★
古川 奏さん『メイク・夏休み・ユア・オウン』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426731625026

★天才賞★
井守千尋さん『夏休みの作文』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427134301426

★いずれ懐かしむことになるあの夏こそが今なんだよな賞★
広咲瞑さん『烏と燕の夏休み』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426667993524

★せつな賞★
尾八原ジュージさん『十年間の夏休み』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426460171762

★オチで草賞★
薮坂さん『夏休みに遭難しよう!』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426982051603

★結婚してください賞★
シャル青井さん『ロリ先輩が夏休みをくれると言ってから俺の人生が滅茶苦茶になってしまった』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426713597018

★文章最強賞★
草食ったさん『夏休みだから泳いだ』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426749203292

★。°(°´ᯅ`°)°。賞★
畳縁(タタミベリ)さん『ノーマルテープ、三十分。夏休みの初恋。』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426507684725

★尊き青春の一ページ賞★
藤崎珠里さん『夏休み、とある月夜』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426568016152

★わっくわく賞★
宮塚恵一さん『夏休み怪獣』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427135306490

★大人の階段賞★
偽教授さん『君の夏休みに雪は降らない』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427138441769


 主催者が選んだ受賞作は以上です。ここからは各賞の選定理由とかをお話ししていきます。


【第二回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞について】
 すべての作品を読み終えた段階で、自分のなかで大賞の候補があがっていました。それは以下の4作です。

『メイク・夏休み・ユア・オウン』
『夏休みと桝田優衣で韻が踏める』
『烏と燕の夏休み』
『夏休みの作文』

 企画内容ですでに申し上げた通り、賞に選ばれるのは主催者の好みに合致した作品です。
 古川 奏さんの『メイク・夏休み・ユア・オウン』は、超おお可愛いヒロイン・鈴さんと、彼女に振り回されるかたちで展開する〝一日で夏休みをやりきる〟という物語の面白さと、魅せる文体が好き。
 あたし黒髪のようにとけそうな気がするさんの『夏休みと桝田優衣で韻が踏める』は、ギャグの楽しさと、ただのコメディでは終わらない意外な展開と、手紙を書くシーンの独特で癖になる雰囲気と、ラストの再会のシーンが好き。
 広咲瞑さんの『烏と燕の夏休み』は、ヒロインがオレっ娘という点と、そのヒロインと一緒にゲーセンで20年前のレトロな格ゲーで対戦するというシチュエーションと、丁寧な文体が好き。
 井守千尋さんの『夏休みの作文』は、軽快な少年少女の掛け合いと、付き合ってないふたりを作文のなかで付き合わせちゃえという素晴らしいアイデアと、ラストのヒロインの思わせぶりな行動がもたらすドキドキが好き。

 各作品に別々の好きポインツがあり、めちゃくちゃ悩みました。それでも最終的に、大賞は『夏休みと桝田優衣で韻が踏める』であると確信したのは、僕個人が「外連味を活かしている作品」に強く惹かれるからです。時に絵文字を使い、時に空白だけを囲んだ鍵カッコを使うなどといった〝遊ぶ〟文章。それだけではなく、「男」と「エセ」と「ボク」の織り成す謎のやり取りは、突飛だというのにその飛び方が美しい。そうして独特な空気感が醸成されてからの、手紙を書くあのシーン。
>「マスター、頼めるかな」
>「はい。 ……ドゥクドゥクドゥクドゥク」
 何だこれみたいな展開、だけどハチャメチャな女子高生ふたりが場の空気をしっちゃかめっちゃかにしてくれたおかげで不思議と受け入れられている。それにより描き出されるのは、会いたい思い、会えないエモい、君とのメモリィ。ラストシーンの桝田優衣、ヤバい装い、短文で潔く終わるストーリィ。
 外連味は、ただあるだけでは凡作になってしまうと思います。矛盾するようですが、読み手の感情をストレートに動かしてこその外連味だと考えます。本作はそんな主催者の好みにガッツリとハマってくれました。あたし黒髪のようにとけそうな気がするさん、素晴らしい作品をありがとうございました。


【めちゃカワヒロイン賞について】
 古川 奏さんの『メイク・夏休み・ユア・オウン』を読み終えたとき……いえ白状すると読んでる真っ最中から既に、主催者は「まじかよ」と思っていました。「まじかよ、この人は何故僕の好きなタイプのヒロインを知っている!?」
 いや知らないでやったのかもしれませんが(古川さんにはうちの『ロボケンダッシュ!!』を読んでいただけてるから知ってるか……)、はいめちゃくちゃこういう子好きです。①ちっちゃい ②元気いっぱい ③主人公をエネルギッシュに振り回す いや~好きです。そんな子がちょっとしおらしくなっちゃうの見せられたらいや~~~~いやいやいや。かわいい。
 一番かわいいと思ったセリフは「お待たせいたしておる!」です。あ~~~(天に召されていく)参加作のなかで一番かわいすぎたので授賞いたします。


【天才賞について】
 井守千尋さんの『夏休みの作文』は、嘘の夏休みの思い出をでっちあげる話ですが、その嘘を作文にしていく中で少年少女の心が揺れ動いちゃうっていう仕掛け、天才だと思いました。ラブコメだ~! その結果、揺れ動いた少女は少年に……ラブコメだ~~!!(語彙喪失)展開が天才なので授賞いたします。


【いずれ懐かしむことになるあの夏こそが今なんだよな賞について】
 広咲瞑さんの『烏と燕の夏休み』は、今この時代を描き出し、そのうえで希望を持たせてくれるような作品だと感じました。コロナ禍のなかで生きるふたり。ゲームは一日一時間という香川県の条例。ふとした瞬間に切れてしまうかもしれない、今だけの人間関係。フレーム刻みの今を浮き彫りにする電子の拳……。ゲーセンの店長の「誰にだって夏休みは必要なんだ」という言葉が印象的でした。今を肯定する物語が好きなので授賞いたします。


【せつな賞について】
 尾八原ジュージさんの『十年間の夏休み』を読み終えた後、背もたれに沈み込んで、うわ~……とか言いながらしばらく動けなくなりました。胸に穴が空いた気分でした。あっけなく終わって、その後は描かれない。だからこその切ない刹那の恋であり、参加作のなかでも際立っていました。授賞いたします。


【オチで草賞について】
 薮坂さんの『夏休みに遭難しよう!』はとにかくオチが良かったです。参加作のコメディのなかでは一番笑えるオチでした。こういう気の抜けるオチが好きなんです。草不可避。授賞いたします。


【結婚してください賞について】
 シャル青井さんの『ロリ先輩が夏休みをくれると言ってから俺の人生が滅茶苦茶になってしまった』のヒロイン・冬川先輩こわい。見た目小学生で実年齢三十歳の職場の先輩こわい。婚活中で主人公と結婚するためにグイグイくるのこわい。まんじゅうこわい。主催者の嗜好のツボを連打するその鮮やかさはさすがの一言。最高だぜ! 授賞いたします。


【文章最強賞について】
 草食ったさんの『夏休みだから泳いだ』は世界観も最強なんですけどそれを描く文章の力も物凄かったです。適度な緩急と、ジャストミートな表現、青春の危うさが伝わる言葉選びが一級品だと思ったし好きなので授賞いたします。


【。°(°´ᯅ`°)°。賞について】
 畳縁(タタミベリ)さんの『ノーマルテープ、三十分。夏休みの初恋。』はエモに振り切った文章と別れの切なさ、終わっても終わらない恋の苦しさ、それを抱えて進むしかない主人公の強い足取りが泣けます……参加作のなかで泣ける度が一番高かったので授賞いたします。°(°´ᯅ`°)°。


【尊き青春の一ページ賞について】
 藤崎珠里さんの『夏休み、とある月夜』は剛速球ストレートな高純度の青春だと感じました。それを約7000字のなかで実現するのは生半可な技術ではできなかったでしょう。ふたりに是が非でも幸せになってほしくなるという点では随一でしたので授賞いたします。絶対幸せになれよ……? ナァ……(!?)


【わっくわく賞について】
 宮塚恵一さんの『夏休み怪獣』は第一話の最後らへんで博士がSFな分析をしているのを見てそこからずっとワクワクしっぱなしでした。真相はわからないまま終わりますが、それもまたワクワクな読後感で、あまりモヤモヤしなかったのがすごいと思います。わっくわく! 授賞いたします。


【大人の階段賞について】
 偽教授さんの『君の夏休みに雪は降らない』は、少ない文字数なのに濃密だと感じました。あと主催者は女の子が私いずれ成長していくのかなあ……みたいなこと思ってたり、大人の階段をのぼっていくシーンとかが好きなのでそこが良かったです。授賞いたします。


 以上、各賞についてお話ししました。どの受賞作にも「ここ好み~」というところがあってたくさん栄養をとった気分です。また、受賞できなかったすべての作品にも良いなって思うところはありました。応募してくださったみなさま、素敵な作品をありがとうございました。
 大賞の『夏休みと桝田優衣で韻が踏める』には★3つとレビューを書かせていただきます。特別賞作品にも★を投下します。
 いや~長いようで短い夏休み(?)でしたね。企画運営けっこう疲れました、読むのは好きですが感想書くのあんまり得意じゃないので……。でもおもしろ作品を見つけるのが楽しかったので、またいつか第三回をやれたらいいなと思います。と、そんな感じの第二回ドゥン大賞結果発表でした。以上で校長先生のお話を終わります」
「校長の話が長ぇんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」(ロケットランチャーを発射する)