こんにちは!
元魔王、ポーション売ります!〜フランチャイズで世界征服(経済的に)〜
の作者です。
今更ながら、お話の中盤(フランチャイズ説明会から出資オファーくらいまで)の解説を書いてみたので、良かったらお読み頂けましたら嬉しいです。
フランチャイズが始まり、説明会が炎上し、出資の話が持ち上がる頃は、物語の中でも重要な転換点です。
外から見ると、アスヒラクフーズは「順調に成功している会社」に見える時期でもあります。
店は増え、仲間は集まり、噂は広がり、人類側の投資家まで現れる。
いわゆる“物語として分かりやすい成長ルート”に入ったように見える。
でも、作者である私がこのパートで本当に書きたかったのは、成功し始めた瞬間に生まれる「見えにくい危険」でした。
うまくいっていない時の問題は、わりと分かりやすいです。
お金が足りない、人手が足りない、知識が足りない。
「どうすれば前に進めるか」がはっきりしています。
でも、うまくいき始めると話は変わります。
・もっと早く大きくなれますよ
・その代わり、少し任せてください
・あなた一人では無理でしょう?
こういう言葉は、全部間違っていないように聞こえる。
だからこそ厄介なんです。
フランチャイズ説明会が炎上する展開も、単に「魔王がおバカちゃんだから失敗した」という話ではありません。
あれは、
「想いだけでは、信頼は生まれない」
という現実を、アマリエ自身が突きつけられる場面です。
彼女は本気です。嘘もついていない。
仲間を増やしたい、世界をよくしたい、その気持ちは本物。
でも、聞く側にとっては――
「知らない人」「実績が少ない会社」「お金を預ける相手」。
だから疑われる。怒られる。「詐欺じゃないか」と言われる。
これはすごく残酷ですが、現実でもよくあることです。
善意があるかどうかと、信用できるかどうかは別。
だからこの炎上は、アマリエが「社長になる」ために、どうしても通らなければならない壁でした。
そして、その直後に出てくるのが人類投資家ウォルター・グレイからの出資オファーです。
ここは物語的には、「ピンチのあとに現れる救い」の形をしています。
お金がある。
実績がある。
道を知っている大人。
条件だけ見れば、ものすごく魅力的です。
実際、断る理由はほとんどありません。
でも、この話で私が描きたかったのは、
条件が良すぎる話ほど、何かを失う可能性があるということです。
出資を受ける=悪、ではありません。現実では、正しい選択になることも多い。
でもこの物語では、それを受け入れた瞬間
アスヒラクフーズは「アマリエの会社」ではなくなる。
・決定権が移る
・優先順位が変わる
・守るべきものが数字になる
それは「悪い未来」ではなく、「別の未来」です。
だからアマリエは迷います。
本気で悩みます。
彼女が何度も「魂」という言葉を口にするのは、
言葉としては少しバカっぽいかもしれません。
連呼しすぎてギャグにもなっています(笑)。
でも、それは彼女なりの言葉でしか「これだけは譲れないもの」を表現できなかったからです。
アマリエは論理の人ではありません。
資料を完璧に作れる頭の切れる社長でもない。
だからこそ、「感覚」でしか判断できない。
でも、その感覚は間違っていない。
・自分が楽しかったか
・誰の笑顔を見たかったか
・何のために始めたのか
この3つを思い出したとき、
彼女は「速さ」より「向き」を選びました。
「会社は、魂の器なのだ」というタイトルには、かなり強い意味を込めています。
会社は、ただの仕組みではない。お金を稼ぐ装置でもない。
そこにいる人たちの価値観や覚悟を、形にする器なんだ、という考えです。
だから、器だけ大きくしても、中に入れる魂が違えば別のものになってしまう。
アマリエが出資を断る選択は、賢い判断というより、「自分でい続けるための判断」でした。
もし、読者様の中に学生さんがおられましたら、
このパートで一番伝えたかったのは、ここです。
将来、進学でも就職でも人間関係でも、
「条件だけ見たらこっちの方が正しい」
「でも、なんか違う気がする」
そう感じる場面は、必ず来ます。
そのとき、すぐに答えを出せなくてもいい。
迷ってもいい。立ち止まってもいい。
アマリエは、何度も迷い、何度も転び、それでも「自分が何を大切にしたいか」だけは手放しませんでした。
この物語は成功するためのマニュアルではありません。
むしろ、
「迷いながらでも、自分の選択に責任を持つこと」
その大切さを描いています。
もし読んでいて、
「この社長、遠回りだな」
「もっと効率よくやれたのに」
と思ったなら、それで正解です。
でも同時に
「それでも、この会社を応援したい」
と思ってもらえたなら、作者として、これ以上うれしいことはありません。
ここまで付き合ってくれて、本当にありがとうございます。
この物語は、まだ続きます。
アマリエたちは、これからもっと迷い、もっとぶつかり、
それでも前に進んでいきます。
その旅を、よかったら最後まで一緒に見届けてください。
お読みいただきありがとうございました!