こんにちは!
元魔王、ポーション売ります! の作者です。
ヴォルフガングという名を持つ黒猫の正体が「女性」である――
そんな事実に、物語の読者が首を傾げるのは当然かもしれません。
名前はあまりにも男らしい……というか、いわゆる「男性名」です。
まるでどこかの交響曲の指揮棒を握る天才音楽家のようで、繊細さと威厳を併せ持つ印象を与えます。
それにしては、彼女のふわふわの尻尾や、琥珀色の瞳が見せる感情の揺れは、あまりに女性的で繊細――。
このギャップ、どう説明すべきか?
何故、メス猫なのに「男性名」なのか?
真実を語るならば、こうです。
この物語がまだ、構想段階だった頃。
ヴォルフガングという存在は、かつて「勇者の呪いによって猫の姿に変えられた、元・少年」でした。
かつては人間の姿を持ち、誇り高き補佐官であり、知略をもって魔王軍を支えていた才人。
だが勇者の策略により、その身を黒猫へと変えられ、口を奪われ、過去も封印される。
その設定は、どこかダークで哀しい哀愁を帯びており、物語に重さを与える存在だったのです。
しかし――物語は生き物です。
物語の構想が進むにつれ、ヴォルフガングは変わりました。
彼は彼女になり、姉のように魔王アマリエを支え、時に呆れ、時に頼れる相棒として、その姿を定着させていきました。
天然でおバカな魔王にツッコミを入れる冷静な知将。
その姿が「女性」であるからこそ、より柔らかく、温かく、そして芯の強い魅力を放つようになったのです。
そして、マサヒロという青年が登場したとき――
作者は気づいたのです。
このままヴォルフガングが少年であれば、マサヒロとの距離感が変わる。
ツンとすました猫が、時折見せる人間らしい優しさ。
それが少年であったならば、それは友情よりも運命や禁忌に傾いてしまう危険性があるのです!
(カッコよく書いてるけど、いわゆるBL??になっちまうぞコレ! って感じですね)
作品の本質を、もっとポップに満ちたものにしたい。
そう思ったとき、ヴォルフガングは少女になりました。
(一部の人からは「少年のままのほうが良かった!」という声がありましたが、皆様はどうでしょうか??)
そして、名だけが――残ったのです。
「ヴォルフガング」という名は、もうただの「男性名」ではありません。
それは彼女の「矜持」であり、「物語の原型の名残」であり、「一度世界に抗った存在の証」なのです。
名前を変えることは簡単でした。
だが変えなかったのは、彼女が「どんな形になっても、変わらず魔王を支え、未来を切り拓く存在」であることの象徴としたかったからです。
つまり、ヴォルフガングとは、彼女の過去の名残であり、未来への継承。
そして、マサヒロがその名を当たり前のように呼ぶとき――
その響きは、かつて失われた時間も、名も、性別すらも超えて、「今ここにある信頼」として物語を照らしてくれるのです。
だから、彼女の名前は――ヴォルフガングのままでいいのです!
以上、名前を変えることがめんどくさかった作者からの戯言でした(笑)。