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「小麦の市民」の後書きという名の言い訳

本作は、「基本的に普通の人って異世界転生したところで出来ることなんか普通のことしかないよね」というコンセプトで書き始めました。実際にはグラハムこと倉間にはやるべきこと、というか知らず知らずのうちにに目的があったわけですが。
設定として存在していた魔法要素がほぼほぼ主人公たちに関係なく、限られた人にしか使えないような設定なのはこうしたコンセプトの通りでしたが、あまりにも要素として希薄すぎたかなあ、と思います。

舞台の背景は最初は中世の予定で割と倫理観などをその辺にするつもりでしたが、冷静になって考えてみると、制度的なところがほぼほぼ近代までに近付いてしまいた。
特に軍事組織の設定を練るうちに、村の役所がやけにしっかり機能したりと、社会制度や軍隊制度が大体18〜19世紀ごろまで前進してしまいました。技術レベルもその辺ですが、倫理観は15〜17世紀ぐらいというちぐはぐな世界です。技術の進歩だけは早かったものの、その速度に人間の精神的成熟が追いついていないようなイメージで認識していただければ幸いです。
一方で、割と市民たちは自由に振舞ってるので、一概に世界史におけるこの辺の時代、とは言い切れない世界でもあります。

兵営生活については、色々なものをモチーフにしてます。徴兵直後の描写なんかは「拝啓天皇陛下様」を参考にしました。チリン陸軍自体は、制度的なところや食事その他について、昭和頃の日本陸軍と近代ヨーロッパの各国をごちゃ混ぜにした感じです。
用語については私の専門が航空分野なので陸海軍混ぜこぜです。

個人的には書きはじめのきっかけが「異世界転生流行りだし一丁自分なりに書いてみるか」程度のものだったので、初期はかなり行き当たりばったりでした。
オチはある程度決めており、いろいろざっとした大筋は立ててましたが、細かいところで詰めないといけない設定がちょこちょこ出てきて、調べるうちにちょっと大筋と矛盾が生じ始める場面がありました。
例えば、ワイバーン乗りが天測航法をするくだり。
このシーンを書いた後に、実際に六分儀を用いて天測する機会があったのでやってみたことがあるのですが、航空機や船舶などの運動する物体から特定の星を観測するという第一段階がまず著しく困難で、その上、位置を特定するのは恐ろしく面倒な計算式を用いる必要があり、どうやっても小一時間はかかるということが判明しました。
それを作中のワイバーン乗りは一瞬でやってのけたかのような描写にしてしまい、超能力者かなにかみたいになってしまいました。
無知ゆえに起きた悲劇です。

こうした細々した矛盾をなんとか誤魔化してを繰り返したため、後半も後半で決めていたオチに持っていくまでが大変でした。
事実、長くて半年近く更新が途絶えたこともあります。
あと、私の構成力のなさを物語る上で、本作は書いてる内に徐々にミリタリーラノベみたいになってきたことも外せないですね。最終的にパン屋要素との比率が逆転しました。本当は幼年学校出身の下士官とかも描きたかったですし、オースティンたちの弓兵の銃も、ここからしばらくしてからライフル銃やボルトアクション式ライフルを開発配備する、などと設定を練るだけ練りましたが、そこまでキャラクターとかを作った所で大筋からの逸脱が激しくなるなあ、と思ってやめました。特に、徴兵以降グラハム以外の人の話が大分多かったような気もしますし、着地点にかなり無理くり持っていった感があります。
グラハム以外の人といえば、アップスロープ少佐は当初名無しの予定でした。しかし、書いていく内に割合に登場回数が増えたので名前を付与しました。尤も、名前が付いたのが出番の最終回というのも変な話ですが。

それと余談ながら、後半の砲兵科において、モデルにした大砲はナポレオン戦争期のもので、正直なところあんなに狙った通りに弾が飛んでいく代物ではありませんでした。というわけで、ブロア軍曹も超能力者みたいになってしまいました。

あと、作中の大麻から麻酔薬を精製するくだりですが、実際にはあんなに単純じゃありません。ですが、描写を省きました。そんなところを細かく書いたって、ねえ・・・・・・。

更新の件然り、脚本の件然り、正直なところ私の文筆の才によるところが大きいので弁解の余地もありません。

とまあ、3年弱に渡り長々と執筆しましたが、ようやく終わりを迎えることができました。
またなんか書くかも知れませんが、その時はその時で長い目で見て頂けますと幸いです。

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