📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346📖第540話 人を縛る機会なんか、そうはないからね。
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093076946439914+++++
📄「首つり役人ですか?」
尋ね返したステファノの声がかすれていた。
「斬首刑なら首斬り役人だろう? うちは絞首刑だから首つり役人てわけさ。そのまんまだと聞こえが悪いだろ? だから、縛り屋って呼ばれるのさ」
罪人の頭から麻袋をかぶせ、首に縄をかける。それがジェラートの役目だった。
罪人は踏み台の上に立たされている。刑の執行役が台を蹴り飛ばし、罪人は首を縄でつるされる。
踏み台はそれほど高い物ではない。なので、罪人は落下の衝撃では死なず、窒息して死ぬ。
縛り方が悪いと、苦しみが長く続くことになる。
「捕縄術の専門家なら縄の扱いに慣れているだろう。そう言われて祖父の代からお役についたそうだ。確かにその通りだけど、ありがたい役目とは言えないね」
死に切れなかったり、縄が切れたりすれば、処刑はやり直しとなる。罪人が許されることはない。
「王様に頂いた役目だからね。文句は言えないよ。誰かがしなきゃいけない仕事だしね? だったら、せめて長く苦しめずに死なせてあげるのが僕の役割だと思うようにしているよ」
直接手を下すのとは違うだろうが、ジェラートは何人もの死に関わってきた。
朝夕に、命を奪った罪人の冥福を祈ることを習慣にしていた。
「ああ、すまない。これは君には関係ない話だ。縛り方にもいろいろあるということを言いたかったんだよ」
翌日からジェラートは様々な縛り方をステファノに教え込んだ。
ほどけにくい結び目。暴れると余計にいましめがきつくなる縛り方。捕虜を歩かせる時のいましめ。逃げ出せないように転がしておく時の縛り方。
縄の種類、特徴、目的に応じた選び方も教えた。
「こんなことは特に秘密でもないけど、知っている人は少ないだろ? 人を縛る機会なんか、そうはないからね」
……