「え? S級の賢者ですって?」
研究所でアリアスとお茶をしていると、門番がやって来て難民の受け入れ要求をしてきた。
その難民は、凄腕の賢者らしい。
もしかしたら、大賢者さまかもしれないわ!
「へぇ。良かったじゃないか。S級の賢者なら国にとって財産だろ? 儲けたな」
「う、うん……。そうなんだけど……」
「魔車で王都門まで送ってあげるよ」
「あ、ありがとう」
「なんだよ。僕の方をチラチラ見てさ」
「え? あ、うん……」
大賢者さまだったらどうしよう……。
初恋の人。
……今でも、愛していると言って良い。
憧れの人。
ああ、なんだか胸がドキドキしてきたわ……。
でも、なんだろう、なんだかモヤモヤもするのよねぇ。
私は魔車を運転するアリアスを見つめた。
「なんだよ。さっきから僕の顔なんか見てさ。変な奴だな」
「べ、別に! なんでもないわよ! ふん!」
王都門に着いた私は口が開いた。
「ヒョッヒョッヒョ。これは可愛らしい騎士団長さまじゃのう」
S級の賢者はお爺ちゃんだったのだ。
ああ、とても大賢者さまじゃないわね。
あの方ならまだ20代とか、その辺の年齢だろう。
「優しそうな人だな」
そう言ってアリアスはケタケタと笑う。
ああ、なんだか、腹が立ってきた。
ギュゥッ!!
「痛っぁあああッ!! なんで急に常るんだよ!!」
「別に……」
「ぼ、暴力反対!」
あーー。
なんかホッとした。