私はララ・ミルヴァーユ。
ジルベスタル魔法研究所の副所長をしています。
所長はアリアスさん。
私は彼の補助がメイン。
アリアスさんは頭が良くて、古代魔法が使えて、なんでもできてしまいます。
それに、思慮深くてとっても優しい。
特別な彼女はいないみたいなのだけど。
魔法設計の研究に余念のない彼は、異性に興味がないみたい。
私とは、仕事だけの関係なのかもしれないけれど。
プライベートでは、何かと遊びに誘ってくれるし、きっと、嫌われてはないと思う。
私はもっと親しい仲になりたいんだけどな……。
「アリアス! あなた2個食べたわね! 卵タルトは1人1個までなんだからね!」
「ん? ああ。読書に夢中でわからなかった」
「だいたいね。みんなでお茶する時くらい読書はやめなさいよね」
「安心してくれ。君たちの話は頭の中に入っているから」
「じゃあ、今度の休みは何するか言ってみなさいよ」
「オッツ婦人宅に食事に行くんだろ?」
「むきぃい! ちゃんと合ってるじゃない!」
ポカポカポカ!
「な、なんで正解しているのに叩かれるんだよ!」
「なんか腹立つのよ! えいえい」
騎士団長のカルナさんはいつもアリアスさんの隣りにいます。
カルナさんは素直じゃないけど、彼が好きなのは明白です。
私だって本当は……。
今日は勇気を出して、隣りに座ってみようかな……。
えい。
と、座った所で、読書に夢中な彼は気が付くはずもなく。
私は、ただ近くで彼の温もりを感じているだけです。
うう……。
存在感の無さよ……。
こちらから会話をすれば、優しい彼は答えてくれるだろうけど。
ああ、わがままかもしれないけれど……。
私からじゃなくて……。
カルナさんより私を見て欲しい。
「石鹸変えた?」
と、聞いてきたのは彼だった。
本を読んだまま、視線は合わせないが。
もう、私の心臓はドキドキです!
「え? ど、どうしてですか?」
「いや。以前の香りはラベンダーだったけどさ。今日はシトラスの匂いがするんだ」
「お、覚えていてくれたんですね……石鹸の香り」
「ああ。いい香りだったからね」
「シ、シトラスの石鹸はダメですか?」
「いや。いい香りだよ。どっちも好きだな」
ああ……。
「ありがとうございます!」
今日は最高の1日になりそうです!