スランプというのは嘘で時間がない。
誰ぞと会食する野暮用ばかり多く、なかなか筆(パソコンだけど)を執る時間が持てないのである。
しかし、人生は小説よりも奇なり、とはよく言ったもので、私の周辺には穏当な気狂いばかりで、私の変人図鑑は日に日に項を増してゆくのであった。
そんなのとの益体もない語らいに執筆時間を奪われていくのは腹立たしいが、予想を超えるバカさ加減に少し得した気分になることもある。
280円均一の居酒屋でもおいしいスペインバルでも驚きと寒気がひっきりなしだった。
ひとつ紹介する。
佐渡ヶ島出身でガキの頃、天然記念物朱鷺を鷺と間違えてエアガンで撃った後輩がいるのだが(曰く朱鷺に詐欺にあったんです!)、そいつが近頃、眼が痛い痛いというので、病院に行かせたところ、なんと眼球の裏側に何枚ものコンタクトレンズが入っていたという。
眼球回りに弛緩剤を注入すれば、ポロポロと、左眼から2枚、右目から4枚のコンタクトが落ちてくるではないか。恐怖の光景である。
「先生にめちゃくちゃ怒られました。でもギネス記録は27枚だそうです」
「気付かなかったのか」
「ええ、眼精疲労だと思ってました」
直後、私はここでは書けないようなひどい言葉で応じたのだが、まぁ、そんな奴だから一ミリも堪えておらず、えへらえへらしてる。
以来、彼の眼は整形したわけでもないのに二重まぶたになり「得しましたよね。結果オーライ」とかってご機嫌も上々なのだから始末が悪い。
そのうちコロっと死ぬか、殺しても死なないかどっちかだと思う。
いつか、こういった類の実在する陽性のーたりんの輩を集めて90%ノンフィクションの小説を書きたいと思っている。