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ーーーーーーーーーーーー〈ここが分割線だ〉ーーーーーーーーーーーーーーー


大好きだった作家ジーン・ウルフが亡くなった。
享年87歳。

うぐぐぐ、悲しい。
ここでも『書架の探偵』という作品に触れたことがある。
『新しい太陽の書』は何度も読み返したマスターピースである。

作家は生身の脆い人間なのでそのうちに消失するけれど、作品も読まれなけばいったんは消えてしまう。

これを期に未翻訳の作品をたくさん出版して欲しい。

『デス博士の島』では何度も同じ物語を読み返した少年が、先のページで死んでしまうことが知れている博士の死を目の当たりにするのがいやで、もう読みたくないと述懐する。

当の博士はこう慰める。

「だけど、また本を最初から読みはじめれば、みんな帰ってくるんだよ」

素晴らしい物語はみんなそうだ。ウルフは技巧的な作家と言われているけれど、一番素朴な作家でもあった。

読むことが好きで、お気に入りの本を擦り切れるまで読む少年のような印象。

そんな人が書く物語もまた何度も読み返す価値がある

『新しい太陽の書』には名剣テルミネス・エストが登場する。

〈ここが分割線だ〉という意味のラテン語である。

生死の狭間には明確な分割線があるのかもしれないし、ないのかもしれない。

ともあれ、作家は白刃の向こう側に去ってしまった。

6件のコメント

  • 『デス博士の島』は、二階堂奥歯さんが紹介してた折に読んだ気がするなぁ。だから2004、5年とかの話? そして『ケルベロス第五の首』を読み進められずに放置してた気がする、なつかすぃ。
  • 二階堂奥歯という方知らなかったです!!
    ペンネームだろうけどいい名前だなーと思ったら亡くなってたんですね。合掌。

    『ケルベロス第五の首』を読みすすられなかったのは、原文で読んだからって隠れカッコいいオチじゃないよね??
  • ううん、日本人の友人に勧められて日本語のやつを……ふつうに……挫折しました。最近はイアン・マクドナルド『旋舞の千年都市』とDave Eggers"The Circle"に挫折した。

    二階堂奥歯さんのウェブ日記、今でもたまーに読み返します。本人を幸福にしない鋭い知性の発露と、引用される本たちとが混然一体となっていて、私にとってはちょっとした沼ですね。
  • いいなぁ他人の「挫折の読書史」みたいなの読みたい。序文で折れた!とかそういう勇ましいやつ。

    近頃はじじーになったのか、小難しいのはめっきりあかんのです。水木しげるの妖怪図鑑とかが心休まります。

    でも、奥歯さんは興味出てきました。

    本人を幸福にしない知性かぁ、、、自分、適温バカでよかった。奥歯日記読んでみます。
  • 「挫折の読書史」、楽しそうですね。ほかの人の読みたい、たしかに。
    本はけっこう自分のタイミングも大事で、面白い本でもぜんぜん読み進まないこともありますよね。(言い訳)

    わたしもきれいな貝がのってる図鑑とか、恐竜の本とか、小学生みたいなやつが最近好きかもしれない。「うんこドリル」も気になるし……。
  • 『八本脚の蝶』読んだっ!

    作家さんだと思ったら編集者なのですね。そしてメチャ胸に刺さった。持ってかれそうです。やばいなー
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