スーツに着られたような若い人が、街に多く見られるようになりました。
きっと初めての職場で仕事に戸惑いながらも、上司に、先輩にと出会いを繰り返しているのでしょう。
ふと昔を思い出し、口元が弛みます。
しかしねぇ、わたしくらいの年になりますと、年度末の忙しさが一段落した春は、別れの季節だったりするわけです。
今年も三人の仲間がそれぞれの未来へと姿を消して、春は通り過ぎようとしています。
一抹の寂しさのなか、忘れられない友人たちがふと手を振りました。
「浦沢直樹はすげぇ漫画家になるぜ」と予言していた漫研のI君。
あなたの予想通り、とんでもない漫画家になってしまいました。
「ヴォーカリストの時代になる」と宣言し、ノリノリでカラオケを披露していたG君。
相変わらず芸能界には疎いのでわかりませんが、バンドブームが遥か遠くへ過ぎ去ったのは確かです。あなたはあの赤いバラの刺繍のシャツが似合う、オッサンになったのでしょうか。
VOWWOWが大好きで、二人で山本恭司の追っかけをしたKさん。
今でもギター、弾いていますか? わたしはジェフ・ワトソンのライトハンドの真似、諦めました。彼のギターが27フレもある特別仕様だと、あの頃に教えてくれていたら、あんな無謀な挑戦はしなかったのに(笑)
「わたしは専業主婦になって、好きなものだけを描いてやる!」とトンデモ発言でドン引きさせてくれたY子。
わたしの心にまだ恋のコの字も芽吹く前に、「だから、あんたみたいな男には引っ掛からない」とのアスファルトみたいな強固の完全舗装宣言で勝手にフッてくれましたが、どうやら正解のようです。
うちの妻はグータラ亭主のせいで、毎日忙しそうに家事をやっております。
おなたが描いてた、あの1000巻にも及びそうなファンタジー漫画は完結したのですか? それとも、まだ描いているのでしょうか?
進学やら就職で、いつの間にやら疎遠となり、今では行方不明となってしまった友人たち。
たくさんの迷惑を掛けたし、山ほどの迷惑を掛けられました。
Y子、あの即売会の夜、酔いつぶれたお前をおんぶして家に届けたのって、わたしです。おかげでぐーすか眠るお前の横で、お父さんにメチャクチャ怒られました。
(お父さん、善からぬ企みがあったなら、お泊りしてましたから。その方が、よっぽど近かったのですよ。 笑)
みんな、今は何をしているのでしょうか?
わたしは今も書き続けております。あの頃よりは、少しはうまくなったと思うのですが、どうなんでしょうねぇ。
「人生とは、出会いと別れの繰り返しよう」とは、何の小説だったのでしょうか? あるいは漫画だったのか、アニメだったのかも覚えていません。ですから、これに続く言葉なんてぜんぜんわかりません。
だから、勝手に別れの言葉を付け加えてみます。
再びめぐり合うその日まで、またな。