令和四年、年末。
二人組の美少女が、場末の歓楽街に向かって歩を進めていた。その足取りは妙にしっかりとしており、決然とした意志を秘めているようでもあった。
「六花。寒さに強いって言っても、いくら何でもその衣裳じゃあ寒いわよ。主に見ている方が」
「見てる方が寒いのなら別に問題ないじゃないか。俺……いや私は寒くないんだからさ」
白い息を吐きつつ少女たちが語り合う。六花と呼ばれた少女は、一見すると薄手のスプリングコートを羽織っているだけに見える。その下にはさらに薄手の――しかも胸元の大きく開いた――チャイナドレスを身に着けているだけであるのを、ツレの少女は知っていた。だから寒いと言ったのだ。
癖のある銀髪を揺らし翠眼を輝かせながら、六花はツレの少女を眺めた。その面にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。少年のような笑顔だった。
「それにしても京子ちゃん。京子ちゃんが歓楽街みたいな所が苦手だって知ってたよ。だけど、まさかそんな姿で潜入するなんて……」
「良いでしょ。六花と違ってこっちの方が性に合ってるんですから」
京子と呼ばれた少女は、気恥ずかしそうに目を伏せた。彼女の出で立ちは六花のそれとは対照的だった。彼女は男装していたのだ。髪も短く切り揃え、やや武骨な男物のコートとスーツは、彼女のしなやかな身体の輪郭を覆い隠していた。
二人ともこれから同じ店に潜入調査を行う運びとなる。しかし二人の性格や気質の違いから、一方は男性従業員として、他方は女性従業員として潜入する事になったのだ。
……続きは気が向いたら書くかもしれません。書かないかもしれません。
一応ネタバレしておきますが、京子ちゃんも六花ちゃんも「中身」はゴリゴリの男ですね。いつものあの二人組でした(爆)