お読み頂きありがとうございます。eLe(エル)と申します。
初めてのノートは、このアカウントで小説の執筆活動を再開したきっかけでもある「中性はグレーに染まる」という作品について、ちょっとした宣伝混じりにお話しできたらなと思っています。
※2章を改稿しているので、一部ネタバレになるような部分もあります。
この物語はLGBTQという、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーといったセクシャルマイノリティ(性的少数者)をテーマにした作品です。取っ掛かりにくいテーマだと思いますが、私自身当事者の方々からリアルな話を受けて、半分ノンフィクションとして創り上げています。
正直、私はLGBTQに何の興味もなく、当事者ではありませんでした。「当事者ではない」という言葉そのものが、もはやその人たちを差別していることだと、今になって思います。
けれど、今この作品を書いているからこそ思うのです。ならば誰しもがトランスジェンダーに対して気を配って生きていかなければならないのか。そんなことはありません。別に知らずに生きていたって困らないし、興味がないとかあまり触れたくないと距離を置いて生きていくことに私は賛成も反対もありません。
ただ、「知っている」ということは大切だと考えています。そういう人たちがいて、そういう生き方をして、そういう扱いを余儀なくされていることを知った上でどうするべきか考えるべきだと、私は思います。この作品はそんな、筆者や関係する人たちの強い想いがあって完成したものであり、読み物としては少し重たいものになっているかもしれません。
さて、少しでもご興味が湧いた方は是非この先のあらすじをお読みになって頂けたら嬉しいです。
主要キャラクターは主に4人。主人公は自分が女性なのか疑問に思う、いわゆるクエスチョニングと呼ばれる千秋。そして、天真爛漫で快活な少女、はる。この2人は女子です。
対して男子が2人。一人は周りからの評判もよく何でも出来るイケメン、翔。そして、冒頭電車で痴漢を撃退する一匹狼の少年、真琴。
主人公の千秋は内向的な性格で、時折得体の知れないもう一人の自分と向き合います。自分は女性として生まれてきたけれど、男子と遊ぶ方が楽だ、けれど男の子になりたいわけではない。世間では男だ、女だ、決めつけられる。自分は一体どこに存在するのだろう。そんな、性自認との乖離、年々それが顕著になって、それが違和感になるところから物語は始まります。
千秋が電車に乗っていると、他の女性が痴漢されている場面に遭遇します。気を紛らわそうとネットの記事を見ると、そこには「LGBT」の文字が。読み進めればまるで自分のことが書いてあるかのよう。目を逸らそうにも、痴漢という存在が自分の存在をまた暈し始めます。
痴漢は同乗者に撃退されるものの、彼女は一気に心を揺さぶられてしまいます。学校についても具合が悪くなり、保健室で休んでいると、はると出会います。引っ込み思案な自分に明るく声をかけてくれる、そんな彼女の純真で快活な部分にいつしか惹かれて行きます。それはある種、自分の深層心理で求めていた「女性らしさ」に直結していたからかもしれません。
視点が変わって少し時間は戻り、痴漢が起きた車内。千秋が遭遇したときに痴漢を撃退したのは、同じ高校の一個上の先輩である真琴でした。真琴は日々の憂さ晴らしついでにとやったことでしたが、偶然にそれを同じクラスの翔が見ていました。
真琴は孤立無縁、一匹狼で過ごしていたため、人気者でクラスの中心人物の翔から声をかけられるとは思っていませんでした。そんな翔から「あんなことが出来るなんてすごい!ヒーローみたいだ!」と言われ、仲良くなりたいと切り出されます。
実は真琴はトランスジェンダーであり、過去のトラウマで人付き合いを避けてきました。けれど、少しずつ人懐こい翔に断りきれず、次第に惹かれていきます。
その後、翔ははると幼馴染で、同じ委員会だということも判明し、この4人の関係が少しずつ繋がって行きます。
ところが、翔ははるに対して昔から一方的な、やや病的な好意を抱いていました。それ故、少しずつ翔はトランスジェンダーに対して差別的な発言をしていきます。何故なら、千秋がはるのことを好きになっていくのが分かったからです。
「レズなんでしょ?」「自覚がないなら、何で付き纏うの?」などの発言がエスカレートしていけば、千秋はその分容赦無く傷ついて行きます。
翔は挙げ句の果てに、はるにいいところを見せようと、「痴漢を撃退したのは自分だ」と嘘をついて、真琴のことまで裏切ってしまいます。
「本物のゲイに告白されたら、それって負けじゃない?」なんて言葉を笑いながら告げる彼に、真琴は段々と開きかけた心の扉が閉まり、冷たくなっていくのが分かります。
この物語は、性自認に苦しむ主人公と、それを容赦のない冷たい言葉、現代の言葉で傷つけていく翔を中心としたその他外野、世間。……ジェンダー問題の縮図というのが一つのコンセプトになっています。
その影で、はるも「人を殺した」という暗い過去があります。
真琴は「自覚しているトランスジェンダー」だという気持ち、そして千秋が苦しんでいることを理解していくうちに、彼自身も千秋に好意を寄せていきます。
こうしてそれぞれが心に闇を抱えたまま、逃げられず交錯していくストーリーです。
まだ完結していませんが、おそらくハッピーエンドでは終わりません。現代のトランスジェンダーが解決しないように、それぞれの性的少数者はどのように生きていくかを問いかけるような形で、それぞれ四人の高校生の行先が描かれて、完結する予定です。
長くなりましたが、いかがでしたでしょうか。
現在では2章の中盤、翔の本性が描かれ始めたあたりです。
いよいよ3章ではそれぞれの過去が動き出します。
重く、ドロドロとした展開が続く物語です。それでも、このテーマに少しでも共感した、知りたいと思ったという人にとっては、何かしらの感想を得られる作品だと考えています。
と、もちろんこの作品だけではなく、今後はファンタジー作品なども出して行きたいと思いますし、長い間小説を読むということからも離れていたので、是非他の方の作品も積極的に読んでいきたいなと思っています。
私自身、この作品のテーマについては常に理解を深め、考えをアップデートしなければならないと考えています。今日の理解が、明日には非常識になっているかもしれません。作品を通して私自身、このテーマについて一層の理解を深められたらと考えています。
それでは引き続きの更新をお楽しみください。最後までお読み頂き、ありがとうございました。