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「誰にも愛されない彼女を殺した世界で」について 完結前裏話

こんにちは、eLeです。
今回は表題、現在連載中の「誰にも愛されない彼女を殺した世界で」について、完結前の裏話を書いていこうかなと思います。
※下の方に一部本作のネタバレがありますのでご注意ください。

 本作は元アニメオタクの主人公が変わり映えしない毎日に鬱屈としていると、突然美少女が転校してくるところから始まります。

 ここまではテンプレ展開かと思う主人公でしたが、何故かその転校生は歓迎されていなかった。皆がゴミみたいなものを見るような目で彼女に話しかけようとすらしません。けれど主人公が何度確認しても彼女は間違いなく美少女。何故だろうと不思議に思いながら、いつも通りぼっち飯を味わう彼の元に、彼女が訪れます。そして、主人公だけが自分を嫌わないでくれていることを確認すると、一緒に帰ってくれないか、と彼女から提案されます。

 そうして陰キャラ高校生の主人公は、意図せず彼女と二人きりの接点を共有し、少しずつ距離を縮めていきます。彼女が嫌われている理由は何なのか。それが明らかになるまで、主人公や主人公の周りの暗い過去も少しずつ明らかになっていきます。

 と、ここまでが簡単なあらすじです。

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 実はこの作品の構想は、2年くらい前に作られたものでして。
私は平凡な主人公というのがとても好きで、けれど実際主人公は平凡でない事が多くあります。

 それはフィクションでもノンフィクションでも、実態がそうだからだと思います。劣等生に見えるキャラや陰キャラ、引きこもり、はたまたサイコパス……どのキャラにも表立って見えない非凡なものがある。恵まれないと思うからこそもがき苦しんで、現状を打破しようと考える。それがドラマに繋がるのだと思っています。

[主人公:陶磁文也について]
 キャラ自体は特別モデルがあるわけではないですが、私自身が学生の時卑屈で悲観的で、それでいて全能感を持っている時期がありました。いわゆる「厨二病」ってやつですね笑
でもそれって、大抵中学校くらいから悩むことだと思うんですね。小学校の頃は何をやっても楽しかったし、逆に運動が出来ない勉強が出来ないも、各々受け入れて生活していたと思います。

 それが中学高校と進むにつれて競争が激しくなって、コンプレックスが大きくなっていく。自分に足りないもののせいで親に怒られるとか、好きな人と付き合えないとか、将来の夢が叶えられないとか。

 そういった成長段階でのジレンマが、実に人間らしいなぁ、嫌だけどこれが人間味でもあるよなぁ、と思っているんです。そういう要素を要所で詰め込んだキャラクターが陶磁文也かなと思っています。

[転校生:椎倉時雨について]
 ヒロインである転校生の美少女、椎倉時雨は「何故か嫌われている」ことがベースになるキャラクターです。

 よくこの手の話で「美少女に何故か好かれる」なんて話がありますよね。それの真逆をやってみたかったんです。あとは、設定自体はどの順番で思い付いたか忘れてしまいましたが、主人公の自主性、能動的に動くことを考えたかったんです。

 美少女に何故か好かれてしまうだったら、受動的でいても彼女との接点が増えます。けれど、今作に登場する主人公はそんな前衛的じゃないんですよね。だからきっと、普段通りに美少女が転校生だったとしても、心の中で可愛いなって考えて終わりです。これがリアルなんじゃないかなぁって思うんです。実際話しかけられませんよね、中々。

 そういうリアルを考えたときに、もし彼女が嫌われてる、いじめられてる、その理由がはっきりしてたらどうでしょう。言ってしまえば容姿が醜い、不潔、悪い噂があるなど。人間、何かにつけて理由を知りたがります。納得したいんですよね。で、納得したらそれはそれで、いじめられていようが無視することでしょう。今回の主人公はそういう奴です。

 そのどちらも回避して、この主人公が絡まざるを得なくなるのが、周りから「何故か嫌われてる」というシチュエーションだと思ったんです。主人公に憧れる主人公。自分の無力感、虚無感に焦燥感を隠せない。けれど今回のシチュエーションにあたったとして、10回あったら声をかけられるのは3回くらいだと思います。彼女が転校してきたとき、彼が声をかけなければこの物語は始まっていません。それでもきっと7回は無視してたでしょうね。ちょっとした気の迷いです。

 加えて、彼女が嫌われている理由は既に本編の公開話で明かされていますが、彼女自身もまた因果応報に則ってこのような「呪い」に掛かってしまうわけです。

[嫌われてしまう理由について]
ここから先はすでに公開の話のネタバレになるのでご注意ください。

 転校生・ヒロインの椎倉時雨は、前世の「メア」というニックネームの高校生が転生している、という設定になっています。
 この「メア」という子は幼少期の不幸が重なり、愛に飢えてしまいます。中学の頃に今風でいうパパ活に手を出して、それが付き合っていた彼氏にバレてしまいます。

 彼氏はそこから彼女にパワハラを続けます。そして、高校に入りメアは彼氏の子供を妊娠してしまうのですが、彼氏はそれが分かると彼女を捨て、クラスに吹聴します。あろうことか彼女はそのままいじめに遭い、結果子供は流産。縋るものもなくなった彼女は自殺をしてしまいます。

 ところが彼女は死後の世界で、天使に救われます。天使は、愛ばかりを強請って不幸だったメアに、生き返るチャンスを上げる。その代わり、前世の代償として一切愛されない、嫌われる呪いを掛ける、と。

 彼女にとっては愛されることが全てでした。けれど、せめて自分の子供だけでも愛させて欲しかったと言います。そのチャンスに縋る思いで、彼女は転生します。

 さて、ここで言う転生とはよく言う異世界転生とはちょっと違うと考えています。
 魂の概念は曖昧だったり、人によって解釈が違うので語弊があると申し訳ないのですが、ここでは現時点で生きている人の魂(心)に追加する形での、転生になります。

 これは作中では深く触れていませんが、実は椎倉時雨という女子高生はこの「メア」という当時女子高生だった子とは別の人間ながら、似たような境遇を持っているのです。解離性同一症、いわゆる憑依などとも言ったりしますが、他人の人格、記憶があたかも自分に入り込んでしまったような症状があります。どこかでメアの記事を読んだ、だとか。これも時系列は明かしていません。

 お伝えしたいのは、今回の「転生」は超常現象的・スピリチュアルなものとしてではなく、確かに実在した「メア」という意志を、何らかの形で「椎倉時雨」が保持している、というリアルに基づいています。とまあ、ややこしいのでローファンタジーにはしておりますが。

 作中で書いている通り、この手のことは全てが「大きな呪い」でもあります。精神病もハンディキャップも、急に落ちてきたような不幸と捉えられます。それを形成してきたのは、それぞれの成長の過程、境遇、環境に他ならないかと思います。

[最後に]
 筆者としては、因果応報、勧善懲悪を描きたいわけではありません。けれど、巡り巡って積み上げてきたものは、都度精算されるとしたら差し引きゼロになるとも考えています。人間万事塞翁が馬、というやつですね。

 今回はそういったテーマをもとに、恋愛という側面から、主人公が成長する物語を描いてみたい。そして、人間そんなに大きく変わることなんてないのが実際だとも思っています。けれども、そのほんの少しの経験でも、人の心って変わるよね、成長するよね、というのが落とし所になるかなぁと思っております。

 ここまで猛ダッシュで駆け抜けてきましたが、他の連載もある中で、しかも本格執筆を初めてまだ2週間ということで、不安に不安が重なる一方でしたが、とても楽しかったです。Twitterで絡んで頂いた方も含めて、無事完結に至るのは応援してくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

もうしばらく、終幕までお付き合いください。また、エピローグとして貴重な登場人物である妹の理於と幼なじみの甘、二人の目線でお送りしたいと思っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続き本作の応援、よろしくお願いいたします。

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