現在連載中の「翠雨の水紋」は2月いっぱいで完結する予定です。
本作は明治維新前夜の1864年3月から7月までが舞台でしたが、次作「海鷹の翼」はジャスト1867年が舞台となる予定です。
明治維新では多くの変化が生じました。
そのうちの一つである神仏分離は、この国のそれまでの宗教体系を根本から構成し直した非常に大掛かりな政策であり、その後の日本人の心の在り方にも大きく影響を与えました。
古代日本に大陸から渡来した仏教は、この国にあった土着のアニミズム信仰的な神道と、長い時間を掛けて融和してきました。これを神仏習合といいます。
神でありながら仏である、仏でありながら神である、そんな二面性を持った信仰対象が全国各地にあり、多くの信徒を持っていました。
それを明治政府は完全に分断し、特に寺院から神社へとその権力を移行させました。これには中世以来の封建政治と仏教の連携を断つ意味合いがあったのですが、その影響は甚大なものでした。
次作「海鷹の翼」では、その神仏分離に至る流れと影響を修之輔の目線から描き、そして日本から世界へと向けられる弘紀の視点と両軸を成して話が進行する予定です。
そもそも江戸時代後期から、世界情勢を抜きにして時代の流れを語ることは難しくなってきます。
産業革命をいち早く軌道に乗せたイギリス、革命後のフランス、そしてアメリカの独立といった欧米諸外国の社会変化(これらの社会変化にはキリスト教の変容も大きく関わっています)と、大陸の中華文化圏の歴史的変容があったその時代の流れの中に、日本の明治維新はありました。
羽代藩は地方の小藩と云う設定ですが、海に面した領地を持ち、また茶や樟脳、綿花などの耕作に適した土地を抱えています。
「翠雨の水紋」で得た茶の海外貿易流通路を拠点に世界経済の流れに合流し、明治新政府とどのように折り合うか、22歳になった弘紀の手腕を上手く描くことができれば良いなと思っています。
物語の構成としては、弘紀目線が主体で、修之輔目線の話が合間合間に挟まって情報を補完していく形になるかな?と。「翠雨」では修之輔:古浪+二色=9:1の物語構成でしたが、「海鷹」では弘紀:修之輔=7:3ぐらいを今は考えています。
2023年秋ぐらいから連載を始める予定ですが、それまではひたすら資料を読み込むことになります(写真に掲載したような本の後は論文読解と実踏調査)。
途中、「冬青木」のように、獲得した知識を整理するための短~中編を書くかもしれません。っていうか書かないと知識が脳ミソに定着しない(゚ω゚)
千鳥シリーズで取り上げるのは古代日本から昭和9年まで、日本史をほぼ網羅する期間となっております。・・・・・・中世をすっ飛ばすかもですが。
既に書き終えている本当の最終話に辿りつくまで、少々長丁場となりますがお付き合いいただければ幸いです。