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取材ノート:「翠雨の水紋」(24)江戸の料亭料理

寅衛門「ちょっと久しぶりの取材ノートだな」
寅吉「変な時間にアップしますね……」
寅衛門「土曜日だからな」
寅吉「ええっと、今日のテーマは」
寅衛門「江戸の料亭の料理ってどんなん?だ」
寅吉「いうて、いい感じの資料はすべて著作権が微妙で、画像をここに持ってこれないという」
寅衛門「もう作者が料理を再現して作るしかないな」
寅吉「霰豆腐ですら微妙だったのに、できるんですかのう」
寅衛門「無理だな」
寅吉「はい」

寅衛門「さて、今回ご紹介する浮世絵だが」
寅吉「華やかですなあ!」
寅衛門「江戸は中期以降、多くの料亭が店を出してそれぞれが趣向を競い合い、料亭文化が発達した」
寅吉「武士も町人も利用した辺りが繁栄の理由ですかね」
寅衛門「参勤交代で各地の名物が江戸に持ち込まれ、また江戸の名物が地方へもたらされることにより文化がより発展していった」
寅吉「料理だけでなく、人の交流もあったそうですね」
寅衛門「料亭では趣味のオフ会、おっと、書画会などが行われ、書や絵の品評と即売会などが行われた。作家や版元が複数同席したことから、彼らの間でネットワークが形成された」
寅吉「こんどの同人誌のテーマ、どうする?みたいな感じですかね」
寅衛門「・・・・・・いや、うん、まあ」
寅吉「楽しそうですね!」
*作者、同人誌作成の経験もコミケ参戦の経験もなくイメージで書いております。

寅衛門「武士も町人に混じって意見交換をしていたりと、さながらフランス革命前夜のサロンの様な様相を呈していたようだ」
寅吉「ああ、あそこでも身分が入り混じっての交流がありましたよね」
寅衛門「・・・・・・お前、経験者かよ」
寅吉「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない!」

寅衛門「肝心の料理だが、ここに紹介した浮世絵を見て気付くことは無いか」
寅吉「うん?え~と、刺身がメイン?(上段 中央、右)」
寅衛門「そうだな、江戸は新鮮な魚を好んで食した。他は」
寅吉「はて。あ、料理が床に直置きだ」
寅衛門「それそれ。この頃の料亭料理、基本、大皿に盛られた料理を盆に置き、それを畳の上に置いていた」
*百川楼でも女中さんが大盆に料理を乗せて運んでいましたよね!(https://kakuyomu.jp/users/gonnozui0123/news/16816700428993158353

寅吉「あ、でも汁椀は個人に配られてますね」
寅衛門「汁椀と酒器は個人に、その他は大皿から小皿に取り分けて食べていた」
寅吉「綺麗な女中さんに取り分けてもらうんですなあ。あ、唐揚げにレモン、お願いします!」

寅衛門「で、小皿が盆の上に重ねられているだろう。こうやって大量生産・消費された皿の内の何枚かが、作者の手元にあるわけだ」
寅吉「皿の欠片も山盛りに」
寅衛門「海をきれいにしよう」
寅吉「いうて宿場町跡で作者、発掘したそうですよ、食器片」
寅衛門「だんだん素人の領域を越えつつあるな、あいつ」

寅衛門「もう少し気づくことは無いか。上段、左の絵なんだが」
寅吉「ん?あ、これ刺身じゃないですね。なんだろう、白い脂身……あ、これ肉だ」
寅衛門「そう、これは猪肉、これは牡丹鍋を楽しんでいる場面になる。女性も南蛮を意識した服装をして場面を盛り上げている」
寅吉「はあ、肉食、してたんですねえ」
寅衛門「山クジラと称して、猪の肉は良く食べられていたそうだ」
寅吉「狸は。よく狸汁とか昔話で出てくるような」
寅衛門「肉が臭くて下処理が大変なため、料亭ではあまり好まれなかったようだ」
寅吉「ほうほう。しかし牡丹鍋、美味しそうですねえ。そう思ってみると、上段あと2枚の絵、鍋みたいなのが見えますが」
寅衛門「こちらは、作者も分からん、と。ただこっちの2枚は春と夏の絵で、どうやら食器を水に入れて冷やしているようだ」
寅吉「またそんな風流を!」
寅衛門「江戸の料亭だからなあ」
寅吉「経験してみたいものですな」

寅衛門「ま、今回はこんなところで」
寅吉「・・・・・・ちょっと待ってください」
寅衛門「なんだ」
寅吉「会席の宴会では、この形式で料理が供されたんですよね」
寅衛門「そうだな」
寅吉「じゃあ時折、時代物のドラマで一人一人に膳が配られますがあれは」
寅衛門「ん~、格式の高い場合は有り得ただろうが、町の中、特に下級武士や町人の宴会でそれは有り得んなあ。考証不足だろう」
寅吉「・・・・・・ざっくりいきますね」
寅衛門「四国の皿鉢料理が江戸時代の会席の趣を残しているのではないか、というのが作者の見解だ」
寅吉「ふうん」
*下級武士の宴会の様子は『風浪の残響』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054934987728/episodes/1177354055449471321)に、家老級の会席の様子は『翠雨の水紋』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054934988614/episodes/16816700428876880691)で書き分けてみています(゚ω゚) ←強いこだわり

寅衛門「さて、次は江戸のファーストフードを紹介する予定です!」
寅吉「本編に比べて遅れておりますな!」
寅衛門「・・・・・・いうなよ」

*資料は国立国会図書館のパブリックドメインです。
古代江戸繪集 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2542560
〔江戸高名会亭尽〕〔下谷広小路〕https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1308389?tocOpened=1
〔江戸高名会亭尽〕〔山〕谷 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1308393?tocOpened=1

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