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裏庭におもてと同じ表札をかけるに至った話

 お気づきでしょうか。名前が変わりました。
 と、いいますか、商業の名義を併記しました。

 具体的な理由としては、笹原名義で参加した匿名イベントの参加作の加筆版と続編をこちらに上げたら、名前が違うせいで読者さんがそのページにたどりつけない事態が発生した、ということがあります。
 せっかく興味をもってくださったのに、本当に申し訳ないことをしてしまいました。

 さて、そもそも、どうしてそんなややこしいことになったのかと申しますと。

 受賞で新しい名前ができた当初、ここでは前の名義だけを掲げておくつもりだったのです。理由はいくつかあって、ひとつは編集者さんなどプロの目が入らない作品を商業の名義で出すのが怖かったから。もうひとつは、ここで自由に楽しく書いていたときの記憶を上書きしてしまうようでもったいないと思ったから。あとはなんとなく、気楽に書ける場所がほしかったから。
 でも、商業名義のツイッター(現X)で企画に参加したりしているうちに、別に「ひとりで書いたらこんなもんか」と思われたっていいんじゃないかという気になってきました。多くの方に助けていただきながら、お金をいただく責任をもって書くのとはどうしたって違う。だけど私は書くことが今でも楽しいし、たまにはただ好きに書き散らしたい。みんなと遊びたい。これからはそういう自分をもっと許してもいいかな、と思っています。
 そして夏野の名前とその記憶をそっと保存しておきたい、という想いも、少しずつ変化してきました。すっかり笹原千波になったツイッターでも、夏野、あるいは夏野けい由来のあだ名で呼んでくださる方はいらっしゃいます。そう呼ばれたからといって私は過去には戻らないし、笹原と呼ばれたからといって夏野だったときからの付き合いを忘れるわけではありません。
 新しい名前を過去の名前につなげたとき、すでにそのふたつの名前の境界は融け始めていたのでしょう。時間を経るごとに、私は両者の違いにこだわらなくなっていきました。どちらも私だと納得していった、ともいえます。受賞というきっかけで急激な変化が生じたけれど、私の本質はたぶん変わっていない。何十年も経つころにはもしかしたら、ちょっと違う名前がついただけ、くらいの段差に見えているかもしれません。

 新しい表札を並べた裏庭で、これからもささやかなものを書いていけたらと思います。まだ恥ずかしさはあるけれど。
 古い表札は、ここを離れていた懐かしい人が訪ねてくるかもしれないから、外さずにおきます。結構長くここにいるので、あのひとはどうしているだろうと思うことは多いのです。またお会いできたら嬉しいですね。

 それではまた。

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