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想像の余白

 今、私の前には今しがたもぎ取ったばかりの瑞々しい檸檬がひとつある。


 なんて書き出しから始まるとしたら、その小説はどんなジャンルかなあと考えてやっぱりなんとなくミステリーかなと思ってみたり。
 いやあ、昨日の『ミステリと言う勿れ』とても面白かった。今、唯一リアタイで追ってる作品です。

 主人公の整くん役には様々な意見が寄せられていますが、私はアリもアリ。大賛成! な気持ちで見ています。
 というか、田村先生のあの幾重にも線を重ねる美麗なタッチを完全再現ってそりゃ限度があると思うのです。
 原作も読んでいますが、話の流れや実際のコマでの魅せ方をきちんと汲んで制作に取り組んでいる想いが伝わって、いち原作ファンとして非常に嬉しいかぎりです。
 何よりもOPでの各出演者の名前(フォント)の演出が良い。すごく好き。


 漫画、映像、小説と。
 この三つの中で言えば、私は三番目の手法を用いて表現をしている人間ですが、言葉での表現では追いつけないものや、漫画なら・映像ならこう出来るのにといった場面に多々ぶち当たります。
 その最たる例が、視点の切り替わり。
 漫画やドラマなら、ほんの一コマだけでも主人公ではなく別の視点に切り替えることが出来る。
 これを主人公視点の小説で表すとなると、どう書くのが良いか。未だに正解が見つかりません。
 
 あとは独白の場面とかもそうですね。
 ドラマなら役者さんの動き、景色、流れる音楽全ての演出が重なったうえに『声』で描写が足せるけれど、その全てを文章で書き切ろうとしたら、きっとキリがなくなってしまう。

 小説を書くときはいつも頭の中で絵を浮かべて、セリフや地の文も声に出してみて、時には登場人物と同じ動作もしつつ下地を作っていますが、なかなか思ったようにはいかないものです。

 それでも時々、まったく思いもしなかったひとつの点と点が奇跡的に合致して、まるでこの展開を見越して私はこの描写を選んだのか。
 なんて思えるようなこともあったりするので、私は文字で表現することが好きなんだと思います。


 さて、この檸檬はどうしようか。
 ハチミツに漬けるか。紅茶に浮かべるか。

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