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くろてんゲーム化エッセイー10.世界包括神話ーイラン編(1)

1日ぶりになりました、遠蛮です。

このままどこまで毎日更新を伸ばせるか、案外心配なところでして。ちゃんとご紹介できるほどの神話知識が自分の中にあるかどうか、ちょっと不安。まああれなんですが。どんなに不安でも船長は船乗りたちの前で辛いとか苦しいとか、泣き言を言ってはいけないそうですが。

本日はまず、電子書籍化。ひとまずDLsiteさんにて「黒き翼の大天使-プロローグ」の販売依頼をやりました。プロローグにはほぼ18禁要素なしにもかかわらず18禁で申請。結構残酷に、魔王が人間を惨たらしく……とか書いてますしね。本当は1幕3章まで全部一気にやりたかったのですが、一人で校正して改稿してやってたら時間がなく……本当に1日48時間欲しいところです。日照時間も倍になって地獄ですね、やめておきましょう。

で、今日の「世界包括神話」は……インドの次に好きな神話というとメソポタミアか島のケルト(アイルランド)なんですけど、やはり最初がインドなら仲の悪い兄弟分を無視は出来ますまい、ということでイラン神話。

まず、インド・イランの人々の宗教的根幹は「ヴェーダ(基本的にリヴ・ヴェーダ)」と「ヤシュト」でした。……「リヴ・ヴェーダ讃歌」は岩波さんから出てるので結構簡単に手に入るんですが、ヤシュトってたぶん「アヴェスタ」にしか入ってないと思うんですよ。「聖書」とか「クルアーン」みたいなもんで、最近新版が出たばっかなので入手困難ではないですが、専門書の中でもとくにニッチなものなのでお値段8800円(税抜き。国書刊行会)もするのですよね。しかも資料価値はともかく、読み物として小説みたいに面白いかというと……という弱点があります……さておきまして、この二つの讃歌に共通するのは熱帯地の遊牧民であり戦士である人々の人生観、死生観。なもので自然を愛し、同時に恐れる、ある意味日本人にとって共感しやすい宗教の下地があります。

このヴェーダとヤシュトの信仰はたぶん前1400年前後に、ちょっとした……というかもしかしたら世界最大の変革を迎えることになります。ザラシュストラが登場するので。もしかしたら、というのは彼の影響がキリスト教世界を染め上げているという点を鑑みれば、ということですが、実のところ彼が生前にそこまで巨大な名声を博していたかというと、キリストとおなじでゾロアスター教がペルシアの国教になるまで、彼の死後数百年後のダリウス一世の時代までかかります。ゾロアスター教えというとやはり、善悪二元論が有名ですね。あと鳥葬。ほかにもたっぷり厳しい戒律がありますが、一般的にはこの二つがパッと思いつくと思います。ペルシアはその後長いこと東南アジアの覇者でしたが、670年頃? 最後には新興のイスラームにより根だやされました。それで残念なことに現在、アヴェスタは「原アヴェスタ」という本来の姿の4分の1しか残っていません。8800円出しても。

なのでアヴェスタから神話物語をひねり出すのはやや難しくあるのですが、ただひとつ、イランと言えばこれ、という文学作品が存在します。お察しの通りフェルドゥシーの「王書(シャー・ナーメ)」というやつで、まあ日本語資料としては岩波さんと平凡社さんの二冊、それもどちらも抄訳版しか存在しないのですが、かなりに面白い話なので一読の価値ありです。最近あちらの国で映画やらドラマを国家事業として始めたという(韓国みたいな)話を聞いて、じゃあロスタムとかソフラープのお話が本場の配役で見れるのかなと、今年の、最近そう思ったのでした。

イスラム神話のおこりというと、まず宇宙には善と正義の神‥というか純然たる「善」があった。太陽も星も月も大地も、すべて完成した状態で静止していた。しかし時として悪なる者が宇宙に闖入し、世界を擾乱し、そして成長もさせた。霊峰アルブルズは800年かかって天の星辰の高みにとどいたといいます。このアルブルズが今現在の宇宙を支える枠組みになっているという壮大な話で、この山頂からそびえる橋チンワントが死者の国・悪魔たちの王国となっているという話。この宇宙図を絵に起こしたものを見ると分かるのですが、やはりというかインドの宇宙卵(ヒラニヤ・ガルパ)の内部構造に似ています。

 雨の創造主はティシュトリヤ神で、彼が大海ウォルカシャを創り、広大無辺、アルブルズ外辺に広がるそのほとりには水の女神アナーヒターの管理する、1000の泉があるのだとか。またこの海には2本の木が立ち、1本はガオクルナ、もう一本はハオマ。二つとも霊薬の材料で人は宇宙が更新される際にこれを服用するといいます。もう一本、ありとあらゆる樹木の種を産する百種樹というのもあって、この木の枝に住むのが有名なシームルグ、王書にも登場する霊鳥です。まあなんで雨の神の話が最初に登場するかというと、このティシュトリヤが創造神にあたるのです。即ち最初に雨が降った時、世界は7つに分割されて、中央のフワニラサ、その外辺の6か所はキシュワルという土地になって、互いに行き来できなくなりました。いや、実のところたったひとつ行き来する方法はあり、スリソークという牡牛に乗れば行き来できるのですが。

‥大体こんな神話があるのですけれども、具体的に「神話物語」はあまりないのです。次回「王書」から英雄物語を引っ張ってきますのでお待ちを‥と、その前にいくつか面白い神格の紹介を。

ワユ
インドだとヴァーユという名前で、暴風と命の運び手。あちらの人にとってモンスーンというのは日本人からは考えつかないほどの猛威なので、その象徴たる神はまさしく「力」ということになります。なんというかスケールの大きい存在で、絶対のはずの創造神オフルマズドも悪神アンリ・マンユも、等しく彼には生贄を捧げるという、「なら彼が最高神やんか」というところですが、野心なき神、といいますかオフルマズドのように天を支配したり、アンリマンユのように地上を支配したりと思わないわけです。彼が支配するのは両者の中間、「虚界」。

ウルスラグナ
 勝利の神であり攻撃性、威圧する力の象徴。10回変身する神として知られ、その変身の中で人間と雄牛と馬に変身する、というあたりが創造神にして天の神にして星神ティシュトリヤと類似しています。なのでティシュトリヤの「ゲーティーグ(目視可能な力)」がウルスラグナなのかもという説もありです。ちなみにインドだとインドラ神に照応しますが、インドのインドラやアルメニアのヴァハンのような竜殺しのエピソードは持ちません。どちらかというと国家だったり将軍だったりの勝利の象徴。

ほかにも樹神ハオマ=ソーマだったり、火神アータル=アグニだったりです。インドとイランは本当に、根っこの部分で実に似ているというお話でした。 

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