我々の世界とは異なる世界の〝扉〟を開き、さらにはその〝力〟を呼びこむための手段や術式=黒魔術ということか。
ダーレスの「ロスト・ヴァレー行き夜行列車」。本筋とは関係ない感想だが、車窓から眺める日没場面の色彩感あふれる描写が美に入り際を穿ち、さながら文字による風景画のようで美しい。〝クトゥルー神話の紹介者〟といった一面ばかりが強調されがちなダーレスだが、作家としての真骨頂はこういった部分にあるのだろう。
シンガー「魔女」は、教師が〝魔女〟のような女生徒に妻を呪殺され、自身も篭絡されていく物語。一昔前の雑誌で《意中のカレを落とす恋のおまじない》みたいな記事があった気がするが(今もあるのかな?)、本作はそれをされた側の視点から描いているのが面白かった。理性では分かっているのに逆らえず、流されるままに堕ちていく。タイプでも無いのに何故か気になってしょうがない異性がいたら、あるいは〝仕掛け〟られていたりして(笑)。