緒方えいと

　広げた風呂敷をラスト数ページであれよあれよと畳めてみせる手腕はまさに流れる石、さすが！と言わざるをえない。作家活動を通して追及するようなテーマ性というか、どろどろと吹きこぼれるようなルサンチマンやトラウマめいたものが無いぶん、エンターテイメントとして取っつきやすい印象で、そういう意味では東野圭吾に近い読後感だった。
　個人的にはルサンチマンに満ちたトラウマチックな作風の作家が好みなのだが、勿論それは作品の好き嫌いの問題であって優劣ではないことは、一応明言しておきませう。