『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』――言わずと知れたピンク・フロイドの名盤(邦題『狂気』)を元メンバーであるウォーターズ自ら再構築した本作。曲的にはオリジナルに敬意を表しているというか、さほど奇をてらったアレンジはしていない印象。呟くようなウォーターズのヴォーカルはポエトリー・リーディングな趣きがある。
〝太陽の下、全ては調和している。が、その太陽はやがて月に喰われていく(「狂気日食」)〟という、ある種ペシミスティックなオリジナルVer.への、それを作った20代の頃の自分へ80を越えた今改めて送るメッセージが、〝それでも全てが闇に包まれる訳ではない〟……ということか。
そしてお目当ての、再録音時にインスパイアされて作られたアナログ盤のみ収録の楽曲(作品名無し)は、犬の鳴き声や飛行機の音などの環境音に人の語りや既製楽器による断片的なフレーズを盛りこんだミュジーク・コンクリート風な内容でノイズっぽい。
やはりプログレは、ノイズと前衛要素で地続きとなるのだろう。