• ホラー

北上次郎 他 編『日本ハードボイルド全集3 河野典生』読了~♪

 GIベビー、戦争混血児の娘の失踪から端を発する「他人の城」(そのプロトタイプ的作品「ガラスの街」は違うのだが)、同じく混血の少年が主役の「憎悪のかたち」等、初期作品を集めたためか戦争をバックボーンにしたものが目立つ。
 なかでも印象に残ったのが、在日問題が背景の「殺しに行く」 。〝金井〟という姓ゆえ周囲から朝鮮人として差別され、それが故に非行化しヤクザとなった少年と、彼に何かと目をくれる同じヤクザ組織の幹部で朝鮮人の中年男の物語なのだが、最後、ふたりの血が混じる場面で、少年が朝鮮人か日本人かによってその意味が違ってくるのが面白かった。異なる人種の〝融和〟なのか同じ人種への〝回帰〟なのか――読者の判断に委ねる書きかたが上手いのだよねぇ。

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