やっぱり「野獣死すべし」だよなぁ。
高3の頃、大学受験に失敗。一年間の浪人生活が確定したその日に購入、貪るように読んだんだっけ。
戦後の混乱期、朝鮮半島で地獄のような少年期を送り、そのためか、長じて共産主義や宗教に心救われることもなく、ましてや、救助の手も差しのべなかった日本に対する愛国心など持ちようもなかった大藪。その作者の思いはそっくりそのまま、主人公の伊達邦彦に反映されているようだ。
伊達を満たすものは、目的に向かって計画を立案、用意周到に準備を押し進め、障害は冷徹に排除する、機械のようなストイシズム。そして、イデオロギーに比して〝裏切らない〟金(マネー)。
特にその金への執着は、エコノミック・アニマルと揶揄された戦後日本の歩みと重ねあわせてみたら面白いかもしれない。
ともあれ、受験に失敗して鬱屈した一少年の心には、ぴったりジャストフィットした小説だったのでした。