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友人の『グデーっ』とか「んー……?」が好きだった話とか

寒くなりましたね。

寒くなると放熱を防ぐために血管が収縮するので、血圧が上がりやすくなります。
心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性も高まりますので、もともと血圧が高いかたは特に注意が必要みたいですよ。くれぐれも寒いトイレで力んだりしないようにしてください。


さて。
ツイッターなどで絡みのあるかたはご存知だと思いますが、僕の職業はマッサージ師です。
正式には『あん摩マッサージ指圧師』という名称ですね。田舎で施術所を開業して、宇宙一のマッサージ師を目指して頑張っています。

大学生の頃、指圧が趣味の一つになっていました。
なんでなのか自分でもよくわからなかったんですけど、本で指圧の仕方とかを調べて、それを人に試すのが楽しくて仕方なかったんですよね。
仲の良かった友人たちにはよくやらせてもらっていました。

今回は、その中の一人だった友人・Xくんの話を少し。


Xくんとは、休みの日に家にお邪魔する程度には仲が良かったです。
そのときには、せっかくなので椅子で肩のみなどのピンポイントではなく、床に寝転がってもらって全身を施術させてもらっていました。

……彼、いつも、うつ伏せになったときに全身の力が抜けていたんです。

最初からそうだったのか、施術を受け慣れてきてそうなったのか、どちらなのかは記憶が無いのですが、本当に見事に力が抜けていました。どこにも力が入っていない。
一語で表現すると、

グデーっ

という感じです。この表現がピッタリ。
本当に グデーっ です。
体がデカくてゴツい(武道経験者)ので、その様がなんかもう凄くて、自分には妙にツボでした。
施術するのももちろん楽しかったんですが、そのグデーっを見るのも楽しかったです。

いやーおもろいなーと思いながら施術をしていくわけですが。
そうしていくと、なんとなく彼の後頭部をペシっと叩きたくなったんですよね。
なんだそりゃと思われるかもしれませんが、ごっつい巨体がグデーっとしているので、面白くて叩きたくなったんだと思います。

で、本当にペシっと叩いていた、と。(笑)

そうすると彼、頭を上げずにそのままで、

「……んー……?」

って返してくるんです。そのときも体にまったく力は入らず、グデーっとしたまま。
なんかそれも自分には凄くツボで、好きだったんですよ。
ツボを押さないといけないのは僕のほうなんですが、逆に押されちゃってました。
あ、僕うまいこと言いました? そうでもないですか?

というのはおいときまして、いつも僕は彼の「んー……?」には特に答えず、施術を続けていました。
そしてもう少ししたらまたペシっと頭を叩いていたのですが、そうすると今度は、

「……んー……」

となって、今度は語尾があがらないバージョンになります。
しばらくしてからまた頭をペシっと叩くと、

「…………んー……」

『んー』がだんだん遅れてきて、小さくなっていくんです。
そのまま続けてまた叩くと、

「………………」

あ、寝たな、と。(笑)
毎回こうでした。


彼は結構多忙な身で、いつも貴重な休日の時間を割いて施術に付き合ってくれていたのですが、特に体のここが不調なので改善したいとかそういう事情がある訳でもなく、東洋医学に興味がある訳でもありませんでした。
どうも、グデーっとする時間を大事にしたかったようなのですよね。

あれから年月が経って、僕も今では趣味ではなく仕事として施術をしています。
彼のおかげ?もあって、話すとすぐわかるのですが、グデーっとする時間を大事にしたい患者さん(というよりもお客さん、ですね)は結構いらっしゃいます。

そういう人に施術するときは、特に「こうしてほしい」という要望が無ければ、気持ち良さを重視して施術します。
施術前のヒアリングや体のバランスチェックなどはやりますが、施術中はなるべく余計な声掛けはせず、「ここは~のツボで~な効能だ」とか「ここをほぐすと~筋が緩んで~関節の動きが~」とかそういう能書きも聞かれない限りは言いません。
ひたすらグデーっとしてもらって、そのまま眠りに落ちてもらっています。

中には「うちは治療院なんだからリラク目的の人はお断り」「寝る人は来ないでくれ」というスタンスのお店もあります。それを否定するつもりはもちろんありません。
ですが個人的には、こんなピリピリした世の中ですし、リラクゼーションも大事な治療ですよ、と思います。


ちなみに、Xくんとは今もたまに会います。
お堅い仕事に就いていますが、やっぱり施術中はグデーっとなります。(笑)

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