ライトノベルのラブコメは、モテない男子の渇望を満足させるためのものだって説があります。だから、冴えない男子でもクラス1の美人に好かれるし、いろんな女の子に囲まれてチヤホヤされたり、えっちなイベントが発生したりする。
もちろん、冴えないままだと面白くないから、何かしら飛び抜けた力や特技を発揮して、女の子たちに尊敬されるのも欠かせない。
でもラブコメはポルノじゃないから、キスまではありだけど、生々しい性行為は書いちゃいけない。そういう作品はレーベルも違うし、そもそも読者から求められてないんだそうです。
とは言え。
元気がありあまっている高校生男女が、本心から好きだってわかりあえたら。
ずっと一緒にいるって思いあえたら。
頑張ってセッティングするか、流れでするかは別として、そういうことしたくなるはずですよね。
今まで読んできた中で、そこの葛藤が一番印象に残っているのは竹宮ゆゆ子先生の『とらドラ!』です。
原作の最終巻10巻で、ついにお互いの心が通じ合った竜児と大河は、母親と祖父母を和解させるために祖父母の家に行きます。
なんやかんやあった後で夜になり、竜児と大河は布団をひいて寝るのですが、そこのシーンでもキスまでしかしない。竜児は、大河に触れたくて、抱きしめたくて悶々としているんですが、大河にガバッと布団に乗っかられてキスされただけで、疲れ果てているので朝まで寝てしまって終わり。
でも。
これをアニメ化した、脚本の岡田麿里さんと監督の長井龍雪さんは、「そんなことないだろ!」とアニメオリジナルの改変をしました。
まず、二人が寝室でキスするシーンは、月光の中、二人きりの質素な結婚式を模したしっとりと美しい演出になります。
また、それ以後は絵としては描かないのですが、翌日帰る時の電車の中で、一コマだけ演出を差し込んでいます。竜児と並んで椅子に座っている大河が、竜児に寄り添って、両足をモジモジさせる、ほんの一瞬のシーン。
説明も何もなければ見逃してしまう一瞬の動きですが、キャラデザの田中将賀さんが書かれた、「お疲れ様でしたの本」というメイキングブックの中で、このシーンの意味が解説されています。
竜児と大河は、実はキスの後、やることをやっていた。電車の中の大河の足の動きは、事後の痛みを表していると。
これね、小説で書いたら絶対にダメなやつですよね。ダメというのは倫理的な意味じゃなくて、演出として成り立たないという意味で。アニメだからこそできる最高の表現。
自分も、ラブコメで公募に出していますが、こういうところは書かないし、書けない。『四年目のアンソロジー』では、エピローグで主人公とヒロインが成長した後の姿を描きたかったから、そういうシーンを入れましたけど、純文学的な表現しかしてません。カクヨムはR15までしかダメだし。
それでも、ラブコメを突き詰めて書いていると、そういうシーンで幸せになるヒロインを描いてみたいなという、欲が出てくるんですよね。エロを描くのが目的じゃない。好きで好きでしょうがないから、えっちもしちゃった、という話。
カクヨムじゃ無理だから、ノクターンとかに登録して書いてみようかな。
需要、あります?