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最近の騒動について(2/2)

前話の続きです。
「最近の騒動について(1/2)」を先に読んで下さい。



3)前作と映画「トワイライト」の類似比較
 B氏の前作に「炎のトワイライトアイ」という作品があり、これがアメリカ映画の「トワイライト」のあらすじとタイトルを盗作したものだ、とA氏は主張しています。これまで、作品名はC、Dと伏せて来ましたが、こちらはタイトルそのものが議論となっていますので、明示しました。

 「炎のトワイライトアイ」(以下小説と呼ぶ)は、主人公の高校生の少女茉莉が、転校して来た少年神宮寺静藍と出会うところから始まります。静藍は吸血鬼に呪いをかけられたため、半分人間、半分吸血鬼という中途半端な状態で、人間である静藍と、吸血鬼のルフスの二重人格状態になっていました。
 静藍に呪いをかけた恐ろしい吸血鬼セフィロスは、なんとかして静藍を完全な吸血鬼ルフスにしようと襲って来ますが、ルフスは人間の血を飲もうとはせず、逆に茉莉は友達の協力を得て、静藍の呪いを解いて完全な人間に戻すために奮闘します。

 一方のアメリカ映画「トワイライト」(以下映画と呼ぶ)は、高校生の少女ベラと、同級生で吸血鬼のエドワードの恋物語がテーマの作品です。冒頭の事故を防ぐ場面から、お互いに惹かれあう胸キュン恋愛シーンが溢れていて、大人気になりました。

 高校が舞台で、ヒーロー吸血鬼が凶悪な吸血鬼から主人公少女を守るという行動は似ていますが、そもそも小説の茉莉は吸血鬼人格のルフスには好意を持っていません。むしろ、人間である静藍の体を勝手に酷使するなと食ってかかるなど対立的です。凶悪な吸血鬼から守ってもらっておきながら、勝手なことを言いますね。
 主人公の特別さも、映画のベラは吸血鬼に特に好まれる香りを持っていて、敵・味方を問わず血を吸われそうになる「おいしいエサ」ですが、小説の茉莉は逆に、吸血鬼を鎮静化する芍薬姫の力を授かり、悪役吸血鬼が、抹殺せねばとつけ狙う敵になります。

 そして最大の相違点は、小説の悪役吸血鬼のボス、セフィロスと、人間側についている吸血鬼ルフスは、少年の頃からのライバルにしてバディで、自分を庇って三百年前に死んだルフスを復活させたいというセフィロスの行動は、男同士の愛情によるものであることが中盤から明かされます。
 つまり、人間の少女と少年のラブコメっぽい導入部は表向きで、物語の本質は、吸血鬼の男同士の壮大なブロマンスだった、というどんでん返し構造になっています。ターニングポイントを過ぎてからの15章分は、三百前のセフィロスとルフスの悲劇の描写に費やされます。そしてラストシーンは、茉莉が持つ魔法の剣で吸血鬼二人を刺して消滅させることで、三百年前の因縁から解放し、完全な人間に戻った静藍と茉莉が幸せなエンドを迎えます。

 この小説は、実は人間の少女とセクシーな吸血鬼男子のラブロマンスなどという要素は、かけらも無い、むしろ古典的・耽美的な吸血鬼退治のゴシックロマンなのでした。
 少なくとも、ストーリーとキャラクター設定には、映画の盗作と言えるような類似点は全くありません。

 次に、タイトルにトワイライトという単語が入っているから盗作だという指摘がありますが、これはどうでしょう? オカルトっぽい作品でトワイライトというと、自分は、むしろずっと以前の「トワイライトゾーン」というアメリカのドラマシリーズと映画を先に思い浮かべてしまいます。単語をタイトルに使うだけで盗作ということになると、映画「トワイライト」は「トワイライトゾーン」の盗作ということになってしまいますが、そんな指摘は聞いたことがないです。


4)作品EとFF7のキャラ名
 FF7のキャラと同名かつ共通点が多いキャラということなので、それぞれの登場人物の名前を比較してみます。まず「炎のトワイライトアイ」に出てくる外国人風の名前は、以下の6名。 
 ルフス
 セフィロス
 ウィリディス
 フラウム
 ロセウス
 ウィオラ

 一方、ファイナルファンタジーVIIの登場人物は、Wikipediaの記事によると以下の通りです。
 バレット:アバランチのリーダー
 ティファ:アバランチのメンバー
 クラウド:助っ人
 エアリス:古代種の女性
 セフィロス:英雄ソルジャー
 ユフィ:忍者娘
 ケット・シー:ぬいぐるみ
 ヴィンセント:元タークス
 シド:パイロット
 ブーゲンハーゲン:長老

 共通しているのは、セフィロスの1名となりますので、この人物のことを指しているものと思われます。
 そもそも、「炎のトワイライトアイ」に出てくる名前は、どれもイタリア人ぽい響きですが、セフィロス以外はあまり聞いたことがないものばかりです。どんな意味があるのか検索してみたら、こんな結果になりました。

ルフス:ラテン語で赤
セフィロス:不明。検索してもFF7しか出てこない……
ウィリディス:ラテン語で緑
フラウム:ラテン語で黄色
ロセウス:ラテン語でバラ色
ウィオラ:ラテン語でスミレ色

 なるほど。ラテン語の色の名前で揃えて命名しているようです。設定を見直してみると、それぞれのキャラの瞳の色がそのまま名前になっていました。
 それではセフィロスの瞳の色から逆に類推すると、文中では「コーンフラワーブルーの瞳」と描写されています。「コーンフラワーブルー」って、いったいどんな色? 聞いたことない色ですね。
 こちらも検索してみると、こんな説明が出て来ました。

 コーンフラワーブルー(英語: cornflower blue)は、色の一つで、ヤグルマギク(英名:コーンフラワー)の青い花のような色。 最高級のサファイアの濃い青色を表す色でもある。 ウェブカラーとしてはcornflowerblue(#6495ED)が定義されている。
(Wikipedia)

 サファイアの濃い青色ということなので、ラテン語とサファイヤで検索してみると以下の通り。

 サファイアの名称は、ラテン語で青色を意味する語句 "sapphirus" に由来しています。 実際の意味は「土星への親愛」を意味し、サンスクリット語に起源を発するラテン語“sapphirus”とギリシャ語 “sappherios”とヘブライ語“sappier” に、由来しています。
(Kyocera Jewelry)

 やっと見つけた。ラテン語の青色"sapphirus"だったということか。
 ラテン語の色の呼び方に揃えるのにこだわって付けた名前が、FF7の有名キャラと被ってしまったのは不幸としか言いようがないですね。創作のキャラ名を付ける時には、ありきたりな名前にするか、ユニークな物にするなら、ざっと検索しても有名人などにヒットしないか確認するべきという教訓になります。


4.結論

・A氏の作品Cと、B氏の作品Dの間には、盗作と見なされるような類似点は見つかりませんでした。
・商業作品との類似点の指摘については、「テイルズ オブ リバース」のセリフ「苦しいなら苦しいと言えよ」については類似性が見られ、かつ他の用例がありませんでした。この点については、A氏が盗作だと主張されることも無理がないと思われます。
・その他の商業作品の指摘については、盗作と見なされるような類似性は見られませんでした。

・B氏の作品「炎のトワイライトアイ」については、映画「トワイライト」との類似性は全く見られませんでした。タイトルの類似についても、盗作と言えるものではないと判断できます。
・「炎のトワイライトアイ」とFF7で同一のキャラ名があることは、偶然の一致と判断できます。ただし、不注意だと言われても仕方ないと思います。

以上

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