ある日のカウンター席である。人気店ともなれば店主の接客を面前で受けたい。そんなカウンターの真正面にはセレブ以外の人種は着席困難なのだ。
その夜の常連トップの指定席に座った夫人の常軌をいつした饒舌が止まらない。
「お刺身は全部、ごはんはお持ち帰りで」
それから着席する前に豪華なプレゼントが店主に手渡された。海外旅行で買った旅のお土産である。
祝い事で店スタッフ全員にシャンパンが振る舞われることもしばしば。
店側からすればお客のこの御仁からもてなされる外見である。
しかもそれ相応のサービスも求めない。
しかしカウンターの客の意表をつくこの逆接待こそが至福の優越感をかの御仁に与える。