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リ・アトランティス3.11ノート

 アトランティスの物語を前から書こうと思っていました。それと3.11東日本大震災をテーマにした物語も書こうと思っていて、その二つを一つにしたのがこの作品です。
 主人公・八木真帆はアトランティス世界では悪人側で、現代では善人として行動していますが、臨死体験で過去の自分を知って愕然とします。と同時に、自分が目指していたフリーエネルギー科学者としての目標について悩み始めることになります。それはアトランティスの科学技術がフリーエネルギーである「ヴリル」によって支えられており、それゆえに世界を破壊してしまったからなのです。化石エネルギーから出るCO2問題や原発から、再生可能エネルギー、その究極としてのフリーエネルギーに転換すれば、果たして全ての問題は解決するのか。事故を機にエネルギー転換を迎えるのは確実としても、それだけが問題の本質ではなく、問題はもっと深いところにある……人間のあり方にまで関わってくる、と思いをはせていきます。
 そうしたテーマを追求しながら、アトランティスの物語では、ヴリル・エネルギーによる事故を引き起こす魔法石「ツーオイ石」を阻止すべく、「焔の円卓の騎士」というレジスタンスが結成されます。3.11の原発事故におけるベント作業シーンと、ツーオイ石の事故を阻止するドラマがシンクロします。
 アトランティスの物語を構築するにあたって、プラトンやエドガー・ケイシーを中心に、北欧神話、エジプト、ギリシャ神話、ラーマヤナ他、一部ラブクラフトのクトゥルー神話も参考にしました。「戦いの書」という章タイトルは、死海文書からの引用です。
 その他、ロミオとジュリエット、オペラ座の怪人、アーサー王、白鳥の湖などもモチーフにしています。特にチャイコフスキーは、交響曲第4番(通称チャイ4)を聴きながら作品世界を構想しました。光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」の萩尾望都によるマンガも大いに触発されました。その中で特に重要なモチーフが、ヱデンの園です。
 ヱデンの園は、「戦闘天使ミカ・ヱヴォリューション」でも重要なモチーフですが、人類の文明が何度も滅んでは再興するを繰り返し、その都度「科学文明」という智恵の実を食べ、ヱデン追放を繰り返してきた……という大テーマをこの作品で扱っています。そのため、第三部「水晶解錠の書」では、アトランティスを飛び越え、さらなる過去の文明へと意識がさかのぼっていき、最後は原初のヱデンまでマリス・ヴェスタ(真帆)の意識は旅をします。そこでマリスは一体何を見つけたのか。それがクライマックスとなっています。
 それともう一つの重要な要素がダンスです。瑠璃物語ではサックスが主でしたが、アトランティスでは魔術を行使するシーンでダンスが登場します。光の子も闇の子もダンスをします。これはPerfumeのダンスに啓発されました。
 瑠璃物語がソプラノサックスで過去の神話世界へと意識が飛んでいく話である一方、リ・アトランティス3.11では臨死体験によってアトランティスの世界を思い出すという設定です。
 そしてこの作品と瑠璃物語は、「宝瓶宮の神曲シリーズ」という同じシリーズです。共通するキャラクターとして、クライマックスで加賀美飛鳥が登場し、アトランティス時代のヱメラリーダ・ロックバルトというキャラクターだったことが分かります。この物語はヱメラリーダとマリス・ヴェスタの、光と闇の物語でもあるのです。

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