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「パワースポットガール瑠璃物語」について

 出雲を中心としたパワースポットを巡り、サックスを吹いて過去へと意識がタイムワープするという、「時をかける少女」の物語の発案は、数年前、桜咲く春ごろに桜の名所として近所で有名な大き目の公園に行ったときに思いつきました。夕日で桜が黄金色に染まる頃、サックスの音色が聴こえてきました。一人の女子高生がサックスの練習をしていました。曲は覚えていませんが聴いたことのあるジャズのスタンダードナンバーです。桜、時間帯、サックスの音色のコラボレーションによって、あたかもそこに異空間が出現したようなファンタジックな感覚でした。

 主人公・神楽瑠璃は天宇受売ノ命の転生という設定ですが、このような経緯で踊りメインではなくサックスを吹くキャラクターになりました。サックスを吹きながらダンスをするのですが、後に他にダンサー(フィギュアスケーター)六波羅弥勒というキャラクターが登場します。それに歌手の加賀美飛鳥を加えた三人娘が活躍する物語です。弥勒は弟橘姫の転生、飛鳥は奇稲田姫の転生です。

 なぜ天宇受売ノ命の転生の名前が瑠璃なのかというと、神楽瑠璃の神楽は神道から、瑠璃は仏教の薬師瑠璃光如来から来ています。
 その他、一緒に旅を回る天宇受売神社の神主・神楽比呂司、巫女・神楽仁美が主要キャラクターです。神楽比呂司は思兼ノ神(その他)、神楽仁美は豊与(歴史上では台与と書く)の転生です。

 舞台は、神代の時代を巡る「春」の巻が出雲、聖徳太子の飛鳥時代を巡る「初夏」の巻では尾道、空海の平安時代を巡る「盛夏」の巻は宮島です。主に中国地方を巡る物語ですが、そこに古代史、日本史を鳥瞰できる場所が凝縮されているような気がして、中国地方を舞台としました。

 出雲は古から聖地ですが、パワースポットブームの昨今、若い女性を中心として人気があります。週末にサンライズ出雲で出発して、出雲大社で恋愛成就の祈りをし、日曜の夜に帰ってくるという弾丸旅行が流行しています。
 特に尾道は、角川映画の名作「時をかける少女」の舞台です。何度も映画化・アニメ化されている「時をかける少女」へのリスペクトの意味をこめて、艮神社も登場し、映画について言及しています。
 宮島は、平安絵巻には世界遺産の壮麗な厳島神社が外せないということで舞台にしました。

 神代時代の出雲では神話について、古代の尾道・宮島では仏教(大乗仏教・密教)についてテーマとなっています。それらの時代の歴史人物の物語を通して日本文化、さらには日本のアイデンティティについて迫っていこうという話です。

 神代の時代、さらに古代は調べれば調べるほど謎や分からないところが多いのですが、そういう時代だからこそ想像力が膨らむ、古代ロマンの世界です。しかしそこに生きていたのは現代の我々と同じく、悩みや葛藤のある生きた人々であると捉えて、神々や歴史人物を登場させています。

 さらに今後執筆予定の「秋」の巻では、幕末・明治、「冬」の巻では第二次世界大戦の時代を巡り、神楽瑠璃の最終ゴール地点が8月6日広島原爆慰霊祭となっています。以上のように「瑠璃物語」は、古代及び近代の歴史を巡る大河ドラマです。

 この物語を書き始めたもう一つのきっかけが、美内すずえ先生のマンガ「アマテラス」です。これも角川から出ている本で、神代、日本史をテーマとした壮大なスピリチュアル世界のマンガですが、まだ四巻しか出ていません。そして四巻で止まっています。長編マンガ「ガラスの仮面」がまだ終わっていないという遅筆の漫画家なので、「アマテラス」の方が再開されるのがいつになるのか分かりません。連載時の掲載マンガを、単行本化するにあたって描き直すなど、年々凝ってきているのが原因のようです。
 「アマテラス」の続きはまだ当分読めそうにないと思った時に、それなら自分流に古代ロマンをテーマにした話を書いてみようと思い立たったということです。
 出雲・尾道・宮島各地、歴史・神話・仏教、それにグルメやいろいろな音楽等、めまぐるしい調査をしながらの執筆でしたが、書くほどにさまざま発見がありました。

 「瑠璃物語」春・夏・秋・冬ですが、「宝瓶宮の神曲シリーズ」と冠しています。これは、「瑠璃物語」がシリーズの一環であることを表しています。「宝瓶宮の神曲シリーズ」は、アトランティス時代の前世物語を書く作品と、瑠璃が世界中を旅する「瑠璃物語」世界編などを予定しています。

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